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参画企業インタビューVol.18

三菱ケミカル株式会社「仕事目線だけではない、『人生起点』で考えるキャリアオーナーシップ」

2023.05.17

インタビュー

参画企業

23社の企業・団体が集まり、2022年7月「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第2期」がスタート。最先端のはたらき方を模索するトップ企業が「キャリアオーナーシップを企業に根付かせ、中長期的な成長を生み出していくには、どうしていくべきか?」という問いについて、議論・実践・検証を重ねてきました。
 
参加企業はこのコンソーシアムに何を期待しているのか、実際に参加してみての感想はどうだったのかなど、コンソーシアムへの熱意や成果をインタビューする企画。2期目の第10弾は、三菱ケミカル株式会社から参加している人事本部Japan人事部の鍬形 佐和さん、相馬 愛子さん、増山 栞さんに、HR領域の取材を多く手がけるライターの杉山 忠義と、キャリアオーナーシップ リビングラボの伊藤 剛がお話を伺いました。

鍬形 佐和
人事本部 Japan人事部 人材組織開発グループ マネジャー

2021年三菱ケミカル中途入社。Japanリージョンにおける人材開発・組織開発の推進を担っている。

相馬 愛子
人事本部 Japan人事部 人材支援グループ マネジャー

2007年三菱化学中途入社。本社人事部門、事業所人事などを経て2017年より現職。主に個人に直接アプローチするキャリア支援施策の企画・運営に携わっている。

増山 栞
人事本部 Japan人事部 人材組織開発グループ

2017年に新卒で三菱ケミカルへ入社。ディスプレイ関連部材の営業職を経て、2021年より現職。

※三菱ケミカル株式会社の取り組みについては、下記記事も合わせてご覧ください。
先進企業CHRO/CHOインタビュー Vol.2 
三菱ケミカル「キャリアの『チャレンジ』を促す若手発の人事制度改革」

INDEX

    各人の価値観に通じる内的キャリアの支援を、
    2017年から取り組む

    三菱ケミカルさんは2017年に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの統合による発足以降、2022年4月からは三菱ケミカルグループのもと、一体的な運営体制に移行するなど、大きな改革を進めていらっしゃいます。そのような大きなうねりの中、お三方の役割や具体的な業務について、まずは聞かせていただけますか。

    人事本部 Japan人事部 人材組織開発グループ マネジャー・鍬形 佐和(以下、鍬形):私は人事本部Japan人事部 人材組織開発グループに所属しています。Japanリージョンにおける人材開発及び組織開発のリードを担当しています。

    具体的な業務としては、まさにご説明があったように2022年4月からグループとして「One Company, One Team」という一体的な運営に移行したことを踏まえた、人材開発と組織開発における変革を進めています。

    人材開発領域においては、三菱ケミカルグループである三菱ケミカル、田辺三菱製薬、生命科学インスティテュートの三社共通の人材育成体系の構築を完了し、2023年4月から新たな人材育成体系として各種施策を実行しています。

    一方、組織開発では、今年の1月に発表したばかりの新グループ理念であるPurpose、Slogan、Our Wayに基づく風土改革を進めていくために、各種イベントやワークショップなどの取り組みの企画を広報部門や経営企画部門と一体となって進めています。

    具体的には、これまでも実施していた心理的安全性の醸成をより発展させる対話文化の醸成に向けたワークショップの開催や、各組織リーダーが経営方針である「Forging the future 未来を拓く」に基づく実行計画や新グループ理念を自分自身の言葉で伝えられるような効果的な対話方法の企画を進めています。

    人事本部 Japan人事部 人材組織開発グループ・増山 栞(以下、増山):私は鍬形さんと同じグループに所属しています。担当は日本地域におけるタレントマネジメント関連の業務であり、経営リーダー候補の育成に携わっています。

    鍬形さんのお話に重なりますが、One Company, One Team体制に移行する中で、タレントマネジメントの運用もグループの方針に則った、グローバルで共通する内容にブラッシュアップしています。一方で、日本地域固有の課題もあるので、どのように進めるのがベストなのかを考えながら進めています。

    人事本部 Japan人事部 人材支援グループ マネジャー・相馬 愛子(以下、相馬):私はキャリアサポートグループ(4/1より人材支援グループ)に所属しており、特に個人に焦点を当てたキャリア支援業務を担当しています。具体的にはキャリアデザインワークショップの開催やキャリアフェア(キャリア意識醸成のイベント)企画・実行、個別キャリア相談の実施などを行っています。

    キャリアと聞くと、昇進・昇格などのキャリアアップや従事する業務内容・経験といった外的キャリアのイメージが強いかと思いますが、私が担当している施策では内的キャリア(価値観・興味関心、やりがい等)も大事にしています。各人がどのような人生を送りたいと考えているのか、何を大切にして仕事をしているのかという視点で取り組んでいます。

    それぞれの業務における課題、解決に対する取り組みについても教えてください。

    相馬:2017年にキャリア支援を始めたころから比較すると、キャリアという言葉に興味を持ち、具体的に考えたいという要望は高まっているように感じています。また、実際に何らかの行動を起こしている人も、着実に増えています。企画に参加していただいた方には良いコメントをいただけることが増えてきています。一方で、情報の伝え方には課題があると感じています。

    この点はなかなか解決には至っていないのですが、一緒に企画をしているメンバーとは、対象層をより明確にする必要性を議論しています。これまでは、ある意味、全社員を対象にキャリアに興味を持ってもらう施策を行ってきましたが、もう少し対象を細分化して、例えば、どう一歩を踏み出したらいいか具体的な方法が分からないのか、あるいは本来は働き方・生き方という広い概念を持つキャリアの意味を限定的に捉えてしまっているのかなど、それぞれの層に合わせた施策や伝え方を工夫する必要があると考えています。

    鍬形:相馬さんがお話ししたとおり、人材開発においては自律的にキャリアを切り拓くマインドをいかに醸成していくかが課題だと考えています。自律的キャリアに向けた自律学習を推進するために全社員に対してUdemy Businessなども導入していますが、こちらも積極的に自ら学習を進める人と、なかなか学習が進まない人と二極化しているのが現状です。

    一方、組織開発においては、会社の大きな変革の中で、従業員一人一人が変革の主人公となり、心理的安全性を担保して従業員が率直に発言し、イノベーティブな組織にしていく必要がありますが、まだ道半ばです。先の新しいグループ理念や実行計画と連動させながら、オープンでイノベーティブな組織に変えていきたいと考えています。

    増山:タレントを把握し、適切な育成プランを策定することで、より戦略的に経営人材を育成・輩出していく必要がある、と感じています。特に、私たちが携わるのはもちろんですが、現場の上長が主体的に考え、体制を構築していくにはどうすればよいのか。現在抱える一番の課題です。

    私は今の業務にアサインされたのが2022年7月でした。同業務に関するキャリアが乏しいこともあり、コンソーシアムに参加することで、自分も含め自社に反映することができないかと。今回のお話は、とてもよいタイミングでもありました。

    各社の背景や目指すべき方向性などで、キャリアオーナーシップに対する考えやアプローチが異なることを学んだ

    コンソーシアムへの参加はよいタイミングだったとのことですが、改めてコンソーシアムに参加された経緯をお聞きしてもよろしいですか。

    鍬形:人事部内でコンソーシアムが開催されるとのアナウンスがあり、挙手制で参加できる、とのことでした。他社での取り組みを伺いつつ、似たような課題を持つ人事担当の方々とぜひ意見交換したいと考えていたこと、キャリアオーナーシップは当社の人事制度におけるコアだと感じていたこともあり、ぜひとも参加したいと、同じチームの増山さんや隣のチームの相馬さんに声をかけ参加することを決めました。

    相馬:施策に取り組む一方で、打ち手がマンネリ化しているのではないかと、自分の中で閉塞感を覚えていました。コンソーシアムの参加企業の顔ぶれを見るとキャリア支援の先進企業といわれている会社が参加していたので、課題解決の突破口が得られるのではないかと思い参加しました。

    増山:コンソーシアム内の分科会のひとつに、越境体験をテーマとしたものがあったので、OFF-JTの育成施策を検討する上で何かヒントが得られるのではないか、と期待し参加を決めました。

    実際に参加してみての率直なご感想ならびに、得た気づきや成果などについても教えてください。

    相馬:利害関係のないフラットな関係で、いろいろな企業さんと話せたことが有意義でした。気づきはいくつかありました。例えば、キャリアという同じ言葉を使っていても、各社でイメージが違っていたことや、目指すべき方向性や進める際のスピード感など、同じく視点の違いで打ち手が異なることも学びました。現在の自社の取組みがどの程度のレベルにあるのか分かったのも収穫でした。

    キャリアの選択には正解がないのと同様に、キャリア施策もその会社によって優先順位や立ち位置、捉え方が異なります。そのため議論を行うとそれぞれの考えや知見により、拡散しがちです。けれどもコンソーシアムでは、リード企業さんがしっかりと仕切ってくれていたおかげで、議論が具体的にまとまっていくのも興味深かったです。

    また、社内でキャリア施策について議論する際は、「キャリアを考えることは大事」といった共通の視点や認識に基づき話すことが多くありました。対してコンソーシアムでは、そもそもキャリアオーナーシップはなぜ大事なのか、それ以前に、そもそもキャリアオーナーシップを推進する人事の組織的な役割や担当者としての能力は何か?といった内容から話す機会を得たことも大きかったです。

    コンソーシアムに参加することで先進的なイメージの企業さんも、同じく苦労していることを知りました。ゴールはなく常に進み続けるしかないとの言葉を聞いて、勇気づけられました。

    鍬形:同じようなポジションの方がとても勉強していることを知り、改めて自分もさらに学ばなければならないと、スイッチが入りました。相馬さんの内容に近いですが、他社さんならではの観点や、同じ改革を進めている中でも自社との違いがあることを認識できました。

    もうひとつ、相馬さんと私が参加した第2分科会はディスカッションが終わった後の懇親会も活発で、ディスカッション時には議論しつくせなかった本音や実態、各社さんの悩みも相互に話すことができ、お互い励まし合えたのも非常にありがたかったです。

    増山:私は人事歴が浅いので、自社の先輩からいろいろと教わっていたのはもちろんですが、他社さんの人事経験豊富な方とご一緒させていただくことが勉強になりましたし、いい経験にもなりました。

    私が参加していた第5分科会では越境体験の実証実験に向けて議論を進めてきましたが、スモールスタートでもいいからまずは思い切ってやってみよう、という雰囲気がありました。実際に、これまで例がないような異業界・異業種での副業案件を実証実験として行うと決めた会社さんもあり、フットワークの軽さ、とにかくやってみる、という姿勢から私自身学ぶところが多かったです。

    キャリアオーナーシップを商品と考えると?
    ――視点の異なる他社との相互副業での成果

    三菱ケミカルさんは相互副業にも積極的に参加してくださいました。こちらの取り組みについても具体的な内容を含め、感想や成果などを聞かせてもらえますか。

    相馬:私の部署では2名迎え入れました。1人は人事領域の方で、ワークショップなどのイベント企画をお願いしました。もう1人はマーケティング領域の方で、仮にキャリアオーナーシップを商品として考えた場合、どのように従業員に売り込んでいけばよいのか、マーケティングの視点で提案していただきました。具体的にはターゲットの絞り方や言葉の選び方、興味を引く見せ方など。視点が異なる方が入ると議論の盛り上がりが違うと感じました。

    鍬形:全体で10名程度の相互副業を行いましたが、それぞれ参加したチーム内で活性化を促す存在になっていただいたという印象です。特に、社外ならではの観点や専門性で大いに貢献し、助けていただいたと感じています。今回は実証実験とのことで人事部に限りましたが、今後は他部署でも行いたいなど、評価の声が届いています。

    個から組織、社会へと、キャリアオーナーシップを
    つなげることが重要

    コンソーシアムに参加する前と後で、キャリアオーナーシップに対するイメージや考え方での変化はありましたか。

    相馬:コンソーシアムに参加することで、キャリアオーナーシップは組織や経営と連動することが重要であることをあらためて認識できましたし、より組織間の連携が重要と感じました。例えば、本人のマインドが変わった後に、鍬形さんが取り組んでいるような人材開発や組織開発とどのようにつなげるか、また、人事部門以外でもたくさんの情報発信をしているので、キャリア形成に必要な情報をどうやって提供するかといった点です。

    増山:キャリア相談制度など、当社にはキャリアに関する制度や環境が整っています。一方で、このような取り組みは相馬さんの部署が先導で行うとのイメージでした。

    しかしコンソーシアムでのディスカッションを通じ、まさに相馬さんが話した内容に近いですが、自分の部署や業務でもキャリアオーナーシップの観点を取り入れていろいろとできることがあると意識が大きく変わりました。

    鍬形:以前のキャリアオーナーシップは、仕事をどう選んでいくかということに主眼を置いて考えていたように思います。分科会を通じて、仕事だけではなく各人が人生をどう生きるか、その中で仕事をどのように位置づけ、自分らしさを踏まえてどのように選択していくかが重要だと、改めて思うようになりました。

    三菱ケミカルさんでキャリアオーナーシップを実現していると思える人材は、大まかで構いせんので、どれくらいいらっしゃるとお考えですか。

    相馬:割合をお答えすることは難しいのですが、キャリアオーナーシップについて考える、あるいは変わりたいと考えている層が増えていることは確実だと感じています。特に一昔前は「わからないので教えてください」といったコメントもありましたが、最近は、不安を口にしながらも自分で考えて選択していきたいといった、相談内容の変化からも感じることができるからです。

    増山:三菱ケミカルでは2020年から新しい公募制度がスタートし歩みたいキャリアを実現するために自らチャレンジされる方が多くいらっしゃいます。

    鍬形:公募制度を活用して新たなキャリアを歩む方も多くいる一方、これまで従事してきた業務や環境によっては、キャリアオーナーシップという概念にまだ慣れていない方も多くいます。そういった人材に向けたキャリアオーナーシップのあり方や効果的な施策は、引き続き検討していく必要があります。

    相馬:これまで「キャリア」という言葉に触れる機会が少なかった方に対して、いきなりキャリアを考えてくださいといってもなかなか難しいと感じています。そこで、先にも説明したように仕事だけではなく「どのような人生を送りたいか」という少し広い視点から、仕事や学びを捉えなおすアプローチが大事かと考えています。普段の業務が自分や組織の成長につながり、社会に大きく貢献していることが実感できればご本人にとっても、組織にとってもよりよい影響があると考えています。

    本日はありがとうございました。最後に自社の社員へのメッセージも含め、今後の展望をお聞かせください。

    相馬:キャリアを考えることが楽しい」と思ってもらえるようにしたいです。小さなことでも自分で決めて進むと、その先の選択肢が増えます。選択に迷ったときは、あえてこれまでとは違った道を選ぶと道が広がることを、私自身コンソーシアムへの参加を通じて感じました。人事部門ではさまざまなサービスを用意していますので、キャリアで気になることがあったらいつでも相談してほしいと思います。

    増山:自分自身の振り返りとも重なりますが、仕事としてキャリアを考えるとどうしても堅苦しくなりがちです。そうではなく人生を豊かにするといった観点から、キャリアを考える。その上でどのようなチャレンジをすれば、実現できるのか。このような考えにシフトしたことで気持ちが楽になったことを、社員の方々にも伝えていければと考えています。

    鍬形:新たなグループ理念がスタートしたタイミングということもあり、人事部門だけでなく広報部門や経営企画部門などのコーポレート組織が連携・連動して、三菱ケミカルグループ全体として一枚岩で、キャリアに関するメッセージやサービスを発信していきたいと考えています。

    現場とのディスカッションもしながら各種取り組みの検討を進め、現場の皆さんが実感を持ってキャリアを切り開いていくことができる、現場目線での働きかけを続けていきたいと思います。

    構成:杉山忠義・杉本友美(PAX)
    企画:伊藤 剛(キャリアオーナーシップ リビングラボ)

    コラムキャリアフェア

    『キャリア』に興味を持ってもらうことを目的に、毎年キャリアフェアを開催しています。有識者の講演会をはじめ、お昼の時間をつかったミニワークショップ、アセスメントツールを使ったキャリア相談、お勧め書籍の紹介など、キャリアを考えるためのヒントを提供しています。2022年度は社員の関心も高い「兼業・副業」に特化したキャリア相談を行って、最初の一歩の後押しをしました。

     

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