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参画企業インタビューVol.9

電通デジタル「キャリア支援の最善手を目指す「Performance Based Working (PBW)」とキャリアオーナーシップ」

2023.01.17

インタビュー

参画企業

23社の企業・団体が集まり、2022年7月「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第2期」がスタート。最先端のはたらき方を設計するトップ企業が「キャリアオーナーシップを企業に根付かせ、中長期的な成長を生み出していくには、どうしていくべきか?」という問いについて、議論・実践・検証を重ねています。
 
参加企業はこのコンソーシアムに何を期待しているのか、参画への熱意をインタビューする企画、2期目の第1弾は、株式会社電通デジタルの副社長執行役員の石川 圭介さんと、コーポレート部門 人事企画部 ディレクターの伊勢田 健介さんに、PAX株式会社代表取締役の伊藤ナナとキャリアオーナーシップ リビングラボの伊藤剛がお話を伺いました。

石川 圭介
電通デジタル 取締役副社長執行役員

1999年電通に入社、大阪での広告営業、電通国際情報サービス出向、経営企画局、持株会社出向を経て、2022年電通デジタル執行役員に就任。2023年より現職。コーポレート全般を管掌。

伊勢田 健介
電通デジタル コーポレート部門 人事企画部 ディレクター

2013年、ネクステッジ電通(電通デジタルの前身)の立ち上げに参画。2021年より育成企画部の事業部長に着任し、全社的な人材育成環境の整備や研修企画、制度設計、キャリア開発支援、組織開発支援など、社員の成長に関わる各種プロジェクトを推進。2023年より現職。採用・評価・報酬も含めた人事企画を担当。

INDEX

    ワークスタイル先進企業として、パフォーマンスを重視

    電通デジタルさんでは、2019年から「ワークスタイル開発プロジェクト」として、リモートワーク制度の準備を進めていらっしゃいました。その成果は、社員の働き方においてどのようにあらわれていますでしょうか。

    副社長執行役員・石川 圭介(以下、石川):コロナ禍においても、大きなストレスなくリモートワークを浸透できた、という印象です。それまでは、電通デジタルも原則出社でした。そこから徐々にシフトし、2020年以降はかなりのリモートワーク率を維持できたと思っています。現在はほぼ自宅で社員が問題なく働ける環境が整っています。

    また、特に出社制限はしておらず、社員へはオフィス、シェアオフィス、ご自宅のどこでも働いていいと伝えています。会社で働きたい社員は、出社するのも自由という環境ですね。直近の出社率は20%以下で推移している状況です。

    電通デジタルさんが「ワークスタイル開発プロジェクト」を推進する上で、素地となった「Performance Based Working (PBW)」の思想について教えてください。

    石川:電通デジタルの目指す働き方として定めたのがPBWで、「組織としてのパフォーマンス(成果)を最大化して、目的を最短距離で達成する働き方」をコンセプトとしています。
    クライアントの課題解決によって事業成長を果たすために、社員一人ひとりが「やるべきことを、やるべきときに、やるべき場所で」仕事をする。その一つの手段がリモートワークだと思っています。社員自身が最大限効率的に働ける場を選んでください、という施策ですね。

    リモートワーク以外でも、たとえば今日は集中して手を動かす仕事をしたい、翌日はチームでブレストしたい、といったメリハリが必要なことがあります。そういった場合に、本人が好きなタイミングで、場所や時間を切り替えられることが望ましいと考えています。背景にあるのは「クライアントの事業成長を最短距離で達成する上で、邪魔するような環境があってはいけない」という思想ですね。

    PBWの思想が出てくるということは、もともとキャリアオーナーシップを育む文化がある会社だったのでしょうか。

    石川:そうですね。もともと弊社は働く人材に多様性があり、中途入社も社員の半数程度を占めています。創業時点の2016年7月には600名程度の組織でしたが、現在(2022年12月)は2,200人くらいまで社員数が増えています。中途入社の社員数の方が多く、さまざまなところから来ています。

    さらに、社員に共通するマインドとして「成長著しい業界にいるからには、自分も早いスピードで成長したい」と思っている社員が多いと感じますね。自分の能力を開花させ、スキルを身につけたい、と使命感を抱いている。そうなると、クライアントの事業成長を最大化するために、自分がどうパフォーマンスを上げるべきか、という観点が生まれやすい。社員から「こういう制度がいい」という声も挙がりやすい環境にあると思います。

    人事企画部 ディレクター・伊勢田 健介(以下、伊勢田):実際、社内の制度は社員の声から実現した施策がほとんどです。たとえば「DD Career Jump!」という制度があります。これは、公募制で選考を通過すれば希望部署へ異動できる仕組みです。

    弊社の業務は専門性が高いがゆえに、どうしても組織や業務プロセスが独立し、流動性が下がってしまうという問題があります。そこで「DD Career Jump!」を活用すれば、スキルの幅を広げたり、ジョブチェンジできたりします。

    もともとの配属も個々の社員の意向も踏まえながら決めていくのですが、社員の目線からは決定プロセスの不透明感があることは否めません。そこで、解決策を模索したときに、国内電通グループですでに社内公募制度が採用された事例があったので、知見をお借りすることにしました。それが4、5年前ですね。現在は、ある程度普及した「DD Career Jump!」の制度をさらにブラッシュアップして、より社員にとって使いやすい制度になるよう企画を進めています。

    やりながら考える覚悟と失敗を認める勇気

    社内の率直な声をヒアリングする方法については、他社さんも模索しているところかと思います。貴社ではどのような仕組みがあるのでしょうか。

    石川:まず、誰でも役員・部門長に対して提言することができる「意見箱」があります。そこでたとえば、「以前の会社ではこのような制度があったが、自社でも採用してほしい」「友達から他社でこんな制度があると聞いたが、自社ではできないか」といった声をいただいています。挙がった声は役員が精査し、できるものは実現します。そして、実現できない場合はその理由も含めて社員にフィードバックしています。

    また、こうしたいわゆる投書に限らず、普段のコミュニケーションでも話を聞くようにしています。なるべく経営陣と現場の隔たりを作らないことを心掛けています。社長や役員が社内チャットツールで日々発信し、仕事に直結しない「今日はこう思ったんだけど、みんなはどう思う?」といったやりとりも重ねています。

    経営陣と社員であまり距離を作らず、同じ会社に所属する仲間だと思ってもらえれば、偶然出会った際にも「以前、チャットでこうおっしゃっていましたが、私はこう思うんですよね」と言ってもらえる環境につながるのではないか。意識的にそういう文化を作っていますね。

    伊勢田:弊社でボトムアップの声を吸い上げやすい現状には、2つ背景があると思っています。まず、経営陣から社員への権限委譲をしてもらえる文化です。経営陣からやりたいことの大枠はもらうのですが、実際具体的にどう企画・運用していくかは社員に任されます。
    もうひとつは、会社の文化として「やりながら考える」という進め方がベースにあることです。企画段階で100%磨き込んでからスタートするのではなく、まずは始めてみてから改善する。そういう文化があるので、新しい施策を始めやすい。実際に施策を進めながらPDCAを回していくので、より具体的な改善に繋げやすい利点があります。

    石川:もちろん、「やりながら考える」方法に利点だけがあるわけでもありません。失敗することもよくあります。そういった場合も、勇気を持って「この施策は成果につながらないのでやめます」と決めることも多くあります。そういった朝令暮改のスタンスも含めて迅速さが求められるビジネスをしているので、ある種の覚悟を決めています。

    仮に提案が却下されたり、中止したりしたからといって不利な立場に置かれることはありません。権限委譲はしますが、決定しているのは会社全体です。経営陣も一緒になって考えながら進めていますので、「任せたからには責任を取れ」という思想はないですね。

    他社のお取り組み事例で「できもしないアイディアが出るので、社員の声は聞けない」とお悩みの声を伺うことも多いのですが、電通デジタルさんがそこで社内の声を採用し続けられる理由は、どこにあるのでしょうか。

    石川:できないことも、おっしゃる通りたくさんあります。ただ、その時は率直に「できない理由」を伝えることが責任だと考えています。結果として採用できない理由も、なるべく1対1で社員に伝えることを心がけています。

    伊勢田:こういった制度において重要なのは、透明性です。たとえば電通デジタルでは、部長クラス向けの一部会議を全社員が閲覧できます。ボトムアップの意見がそこでどう扱われているかを、社員が知る機会になっているのです。たとえ提言した制度が採用されなくても、不満を溜め込まないようにすることが重要だと考えていて、そのためには透明性と対話が欠かせません。

    キャリアの柔軟性と専門性をいかに両立させるか

    伊勢田様は、2020年からキャリア支援に携わっていらっしゃいます。そのご経験を踏まえ、社員のキャリアオーナーシップを尊重する点で、難しいポイントはどこにあると考えていらっしゃいますか。

    伊勢田:メッセージを伝える難しさでしょうか。社員のキャリアに正解はありませんし、一人ひとり目指すものが違います。その事情もあって、実際に社としてメッセージを発信しても、とらえ方が三者三様になってしまうケースがあります。

    たとえば、キャリア開発の施策の中で、社員自身のキャリア観を棚卸し、将来の戦略を考える「キャリアアップシート」というものがあります。社でフレームを用意して、考えながらシートを埋めてもらう形です。そこで、例えば新卒入社間もない社員から「まだ、仕事の右も左もわからないのに、ありたき姿を聞かれても困る」といった声をいただくことがあります。

    この根源にはたとえば「自分が行きたい部門・部署を目指すことが、キャリアである」という誤解があると考えています。弊社の業界では、特定の部門や部署を目指しても、世の中の流れから見て数年後にその部署がなくなっていたり、新たに創設されたりすることも多々あります。

    部門・業務内容でキャリア設計することを否定するわけではありませんが、いわゆる外的な側面だけでキャリアプランを立てることが本筋ではないということが、伝わりづらいなと感じています。

    中途社員も、保守的な企業から来た方もいれば、先進的な制度を取り入れている企業から転職される方もいます。その中で同じ方向を向いてもらうためには、どうしても抽象度の高いメッセージを伝えなくてはなりません。「抽象度は高く、それでもシンプルに」という、コミュニケーションの原則に近いものを求められていますね。

    石川:弊社はDXからデザイン、広告、コンサルティングまで、手掛ける業務が多岐にわたります。そのために、社員ごとにありたき姿が全く異なるケースもあります。専門性は深めてほしいのですが、そうすると逆に他部署に異動しづらいキャリアにしてしまうことも可能性として出てきてしまいます。キャリアの柔軟性と、専門性をいかに両立させるかについて、まだその答えを模索しているところです。

    さらに貪欲に、キャリア支援の最善手を目指して

    今回の「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」において、参画している社員さんへ期待されていることをお伺いしたいです。

    石川:弊社はさまざまな施策を試してはいますが、社員になるべく電通デジタルに長く在籍してもらい、そして活躍してもらう上での打ち手は「まだ揃っていない」という認識です。

    それを他社さまから学ばせていただきたいと考えています。弊社からキャリア支援についてお伝えできることはまだ少なく、足りないことだらけですから、貪欲に吸収していきたいですね。

    伊勢田:自社で足りていない部分に関しては、ぜひ取り入れていきたいです。各社それぞれ先進的な部分がありますのでそれを教えていただきつつ、反対に弊社で推進していることを共有していく。そういった、濃い情報交換が人事同士でできているなと感じています。

    キャリアオーナーシップ人材を増やすため、今後貴社で展開していきたいお取り組みを教えてください。

    伊勢田:3つあります。まず、キャリアプランを描く支援です。現在、電通デジタルには「キャリアアップシート」という6つの質問で構成したフレームがありますが、完成からはまだ遠い段階にあります。まずは厚生労働省から出されている「キャリア形成の考え方」を参考に、改善を繰り返しています。より意味のあるものにしていくためにも、まずは前提にある「なぜキャリアプランを描くのか」というとこからしっかりと伝えていかねばならないなと思っています。

    続いて、社内公募制度「DD Career Jump!」の改善です。公募枠数自体は3桁ある年もありますが、実際に異動した社員はまだまだ少なく、選考プロセスの改善や異動後の活躍支援を行っていく必要があると感じています。ただ希望の部署へ異動してもらうだけでなく、いかにその後パフォーマンスを発揮できるようにするかについて、今も議論を重ねています。

    他にも、選考に落ちてしまった方へのフォローアップですね。結果として異動できなかった方には、なぜ採用されなかったのかフィードバックを丁寧に行っています。また、必要であれば別途キャリア面談も実施しています。選考する側も本望ではありませんから、なぜミスマッチが起きてしまったのか、お話を伺ってその後の改善策を一緒に考えています。

    最後に、「社員同士がつながる場づくり」が喫緊の課題です。リモートワークが普及した結果、社員同士のつながりがどうしても薄くなっています。ふらっと席に立ち寄って雑談した結果、新しいアイディアにつながるようなチャンスが失われています。会議のときだけ集まって解散する関わり方でしかつながれない社員も少なくありません。

    ですが業務では、「あの人、知っているよ」という関係性が、プラスに働くことも多々あります。この人脈が、リモートワーク実施後に失われつつあると実感しています。これが人事としては、大きな課題です。社員同士がつながる機会を、特に最近弊社へ参画された社員にも届けたいですね。

    石川:経営の目線から思うことは、施策の具体像を見せることです。たとえば、社内公募制度は無条件で夢を叶えるシステムではなく、事前に異動したい分野のスキルを学習し、チャンスを待っていた社員の希望を叶えるものです。

    ですので、最終的にマッチングが成立するのは、自己研鑽を積んだ社員が多くなります。しかし、ただ単に「社内公募制度がある」とだけ喧伝してしまうと「何もしなくてもスカウトしてもらえる」と誤解を招くかもしれません。

    各施策において、社内公募制度のマッチングのように実例とその背景をお見せし、「理想のキャリアを叶えるためには一体何を準備すればいいのか」明確な像を描く支援ができればと思っています。

    最後に、電通デジタルさんの考える「キャリアオーナーシップ」を教えてください。

    伊勢田:弊社には、物理的な、形のある商品があるわけではありません。弊社が存在する価値は、クライアントの事業成長でお見せしていくしかないのです。そこで与えられたプロジェクトをただこなすのではなく、先回りして行動できるような主体性のある自分になることが、キャリアオーナーシップだと思います。

    石川:私にとってキャリアオーナーシップは「成長に貪欲な人の背中を押すもの」です。弊社に来てくださる方は、もともとキャリアアップに対して熱意がある方が多くいます。ただキャリアには寄り道もあり、ただまっしぐらに最初から目指したものが手に入るとは限りませんし、プライベートのご事情が絡んで中断することもあれば、新たな才能が入社後に開花することもあるでしょう。

    そうした中で、自身のキャリアに真剣に向き合う社員に対して「あなたには、これが向いているんじゃない」と言ってもらえるチャンスを会社としても増やしてあげることが、とても大切だと思っています。電通デジタルが、こういった偶然から幸運なキャリアを手に入れる「セレンディピティに満ちた環境」になってほしい、という願いがあります。

    構成:杉本友美・伊藤ナナ(PAX)
    企画:伊藤 剛(キャリアオーナーシップ リビングラボ)

    コラムシャインアップサイクル

    電通デジタルでは、社員一人ひとりの成長を起点に、会社の事業成長を促進する。このようなコンセプトで「シャインアッププログラム」を展開しています。
    その中で、社員一人ひとりがより良いキャリアを築いていけるように、自らの価値観や強み、会社や仕事のことを「知る」、その上で自分自身の戦略に沿ったチャレンジの機会を「選ぶ」、さらにその機会や可能性を広げるために人や情報と「つながる」、という3つのキーワードを重要視しています。

    https://www.dentsudigital.co.jp/news/updates/media/2022-0401-001300 新しいウィンドウで開きます

     

     

    シャインアップ会議
    変化の激しい時代の流れに対応するために、毎期実施している組織再編に合わせて、社員のキャリア戦略を聞いた上で翌期の最適配置を検討する「シャインアップ会議」を2022年より全社で開始しました。
    1on1により社員の価値観や意向を上長が認識し、本人意向を加味した上で来期に向けて組織としてどのようなアクション・支援をしていくのかを部門長クラスと一人ひとりの社員について議論していく場です。
    毎期の組織変化を”チャンス”と捉え、そこに向けた社員自身の新たなチャレンジを支援できる仕組みとして、「シャインアッププログラム」のコンセプトを実現できるように日々制度改善を行っています

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