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参画企業インタビューVol.23

マクニカ「キャリアオーナーシップが自然と根付く社風・取り組みについて」

2024.02.26

インタビュー

参画企業

38社の企業・団体が集まり、2023年7月「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第3期」がスタート。最先端のはたらき方を模索するトップ企業が「キャリアオーナーシップを企業に根付かせ、中長期的な成長を生み出していくには、どうしていくべきか?」という問いについて、議論・実践・検証を重ねています。
 
参画企業はこのコンソーシアムに何を期待しているのか、参画への熱意をインタビューする企画。3期目の第4弾は、株式会社マクニカ人事本部 副本部長の伊藤 寿央さんと、人材開発課 課長の宇山 雄さんに、PAX株式会社代表取締役の伊藤 ナナと、キャリアオーナーシップ リビングラボの伊藤 剛がお話を伺いました。

伊藤 寿央
人事本部 副本部長
マイ・パーパス:活き活きと、そして手ごたえを感じ続ける

1997年、マクニカにキャリア入社。2005年まで半導体事業部門にてアカウントセールスとして営業課長を経験。2005年に社長室 室長に就任し、以降、2021年まで16年間、社長室長を経験。2021年4月より現職。

宇山 雄
人事本部 人事部 人材開発課長
マイ・パーパス:変化の先頭に立ち続ける

2008年、新卒でマクニカ入社。2022年まで半導体事業部門にて米国半導体メーカーの製品担当として、営業課長およびオペレーションの課長を経験。2022年8月より人事本部に異動し、同10月より人材開発課長に就任。人材育成を中心としたさまざまな企画・運営に従事。

INDEX

    「人がすべて」の企業文化と、
    一人ひとりの自律的な成長を促す取り組みとは

    まずは経営戦略と人的資本経営が、どうマクニカさんで接続しているか教えていただけますか。

    人事本部 副本部長 伊藤 寿央(以下、伊藤):経営戦略・事業戦略を進める最も重要な経営基盤が人、いわゆる人的資本であり、この基盤が強固なものであったからこそ今のマクニカは存在していると思います。マクニカにはもともと「人がすべて」、「人に始まり、人に終わる」という創業者が大事にしていた考えが根底にあります。そしてこの考えが社内に根付いており、常に人の事を最優先に考えた経営が行なわれ、社員の皆さん活き活き働ける環境が作られてきているのだと感じています。
    この「人がすべて」の考えは、不変の価値観として創業時からあり、2012年には、改めて社員や会社がこれまで大切にしてきた価値観、これからも大切にしていく価値観をコアバリューとしてまとめました。マクニカのコアバリューは、T.E.A.M.Sの5つのワードにまとめています。その最初のワード、”T”は、Trust = 信頼であり、その内容は「マクニカでは経験や年齢に関係なく、社員にどんどん仕事を任せます。社員を尊重し信頼しているからこそ、任せることができます」と明記されています。このTrust=信頼が当社の競争力の源泉となり、最も重要な経営基盤である人材を創ってきたと思っています。社員一人ひとりが信頼され、仕事を任されることで自律的、積極的に仕事に取り組むことができ、自律的に取り組むからこそ、仕事を通じて「手ごたえ」を感じて成長できる。それが結果として、事業に貢献できる人材となる。この繋がりをしっかり作れるよう経営層や管理職が一体となって取り組んでいます。
    ここ最近、「人的資本経営」と呼ばれるようになりましたが、当社については元々「信頼」をベースに、一人ひとりが能力を発揮し、自律的に成長していきながら、会社の発展・成長に寄与してきたという点では、あまり「人的資本経営」という言葉を意識することなく、人は最も大切な資本と捉えその最大化に取り組んできたと感じています。

    経営戦略との繋がりという点では、長期経営戦略を意識した施策をいろいろ考えています。当社は長期経営戦略として「Vision2030」を2022年に制定しました。これまで当社が強みとしてきた半導体商社ビジネスやネットワーク・セキュリティ分野を中心としたB to Bビジネスでの強みを生かしながら、新たなビジネスモデルである「サービス・ソリューションモデル」へと変革を進める内容です。これに連動する形で、2024年度には、人事制度を刷新する予定です。具体的には、将来に向けた競争力のある報酬水準への見直しに加えて、ビジョン実現に向け必要になる人材を、変化を生み出していく「変化創出」人材と、変化に合わせ今ある価値を高めていく「価値向上」人材と定義し、その定義を基にしたコース体系に変更する予定です。これらを含め、新しい人事制度や人事施策は2030年に向けた経営戦略との合致を意識しています。
    これまで大切にしてきた「信頼」をベースに、社員がより一層、挑戦できる環境を提供していきたいと考えています。

    次に、マクニカさんが実践されている社員一人ひとりの「自律的な成長」を促す取り組みについて教えていただけますか。

    人事本部 人事部 人材開発課長 宇山 雄(以下、宇山):いくつかありますが、一つは、社員一人ひとりの「主役化」を意識した取り組みです。具体的な例を挙げると、当社では日頃から社員に業績や目標数字を積極的に共有しています。一人ひとりが自身の業務がどのように会社の業績に貢献しているか、意識出来るようにするためです。四半期に一度、決算発表を行う際には、社員向けのポータルサイトに、社長メッセージとして、会社全体の業績だけでなく、事業部門、ビジネスユニット単位の業績推移や、環境変化に対する考察を細かく説明する文章を掲示しています。

    Macnica Awardの表彰

    また、年に一度、イベントホールを貸し切りグループの全社員が一堂に介する「経営計画発表会」を開催しています。このイベントでは、朝から夕方まで1日かけて前年度の業績レビューや今年度の数値目標、重点方針、また長期経営構想や中期経営計画に基づいた目標、戦略を全社員に共有することで、理解を深め一体感を醸成しています。会社の成長や一体感を味わう貴重な機会となっており、特にこの発表会の終盤には、卓越した業績をあげた事業部や、コアバリューに関連する優れた取り組みを実践した社員を表彰するイベント「Macnica Award」があります。演出にかなり力を入れていて、一組ずつしっかり表彰していきます。発表する場面で照明が落ちると、期待や緊張感で、会場の空気が一変します。今年は誰が表彰されるのか、もしかしたら自分かも、と。発表された社員はその場で壇上に上がり表彰を受けることになりますが、スポットライトを浴びながら、全社員の前で祝福を受けますので、まさしくその場面では「主役」になることができるわけです。

    経営計画発表会の様子

    もう一つは、「組織づくり」です。なぜ組織なのかと思われるかもしれませんが、当社では、一人ひとりの成長に対して、組織やマネジメントが果たす役割は非常に大きいと考えています。良い組織文化、風土があるからこそ、社員が気兼ねなくチャレンジできると考えています。当社では10年以上前から、毎年1度、「強い会社づくりアンケート」という名称で、社員の声をアンケートで回収しています。そのアンケート結果は数値化され、良い組織づくりに役立てられます。
    アンケートの設問はパーパスや、コアバリューの浸透度合い、管理職の支援や職場の雰囲気など多岐にわたりますが、結果は社外の専門家の意見を添えて、社長や各部門長にフィードバックされます。部門長はそのフィードバックに対して、自部門の課題の本質が何かを考え、打ち手を検討し、社長にプランを報告します。プランが承認されたら、自部門の管理職を巻き込み、一年かけて良い組織づくりに取り組む。このサイクルを全部門が毎年回していて、各部門トップが先頭に立ち、組織づくりに取り組んでいることで結果としてスコアはかなり高い水準にまで上昇しました。このように、当社ではより良い組織文化、風土づくりを通じて、従業員とのエンゲージメントを高め、一人ひとりがチャレンジし、自律的に成長できるように支援しています。

    評価の8割は「成果よりもプロセス」、
    ユニークな人事制度

    人事制度の観点では、何かありますか?

    伊藤:人事制度では、評価体系を成果・結果よりもプロセス重視にしています。もちろん結果は重要ですが、結果が出なくても、チャレンジした事実や、そのプロセスを非常に大切にしています。結果を出すために、自ら戦略・戦術を考え抜いて実践する、精一杯挑戦したという事実、そのプロセスの質の高さをしっかり評価していこうという考え方です。

    具体的には、一例ですが担当者の評価ウェイトは「プロセス8割・成果2割」としています。これがマネジメントになると「成果9割・プロセス1割」と逆転する仕組みです。これにより、担当者は結果ばかりを気にせずいろいろな事に挑戦しやすくなります。一方、管理職は部下のプロセスを把握するために、取り組み内容や姿勢面などその質の高さをよく見ていき、日頃から部下を支援し続けるようになります。この考えの下で、主体的に取り組む“強い個”を創出していると考えています。

    とはいえ、成果を見ないのも難しいですよね。

    伊藤:もちろん成果を全く見ないという事ではありません。2割程度は成果のウェイトとしています。ただ、成果よりプロセスを重視するのは当社の扱っている商材やビジネスも影響していると思っています。たとえば半導体事業では、商談開始から実際に売上が上がるのは早くても2年後です。将来伸びる、であろう産業に投資しようと思えば、成果と呼べるものが出てくるのは5年後、いや10年後という事もあり得ます。そうなると売上や利益などの結果で評価しようにも、当時の担当者は別の部署に異動してしまって今いない、ということがあり得ます。そこで、当社は結果よりも、結果を出すために「どのように取り組んだか」にフォーカスをあてた評価体系にしてきました。

    ※マクニカに根付く独自の人材育成風土「手応えサイクル」
    信頼をベースに責任と権限を与え、任せることで成長を促す仕組みをこのように名付けている

    独自の育成システムを通じた人材育成施策

    人材育成については、OJTや研修など、具体的にどのようなことを実践されているのでしょうか。

    宇山:研修は、「MAC University」といった独自の研修体系 を作っています(図参照)。当社の研修体系の特徴は、20代半ばの中堅社員レベルから、マネジメントの基本要素をしっかり教えて、将来的にマネジメントを目指すうえで必要な心構えや啓発課題を明確にしてもらう取り組みを実践しています。次期経営幹部候補の養成を目的に、管理職の中から選抜された社員を対象に実施している選抜型研修もあります。また、研修の社内トレーナー制度といったものもユニークな取り組みで、選抜型研修の卒業生に、中堅社員向けの研修に社内トレーナーとして参加してもらっています。社内トレーナーには、中堅社員に対して管理職のロールモデルを身近に感じてもらうと同時に、研修内での対話やアドバイスを通じて、当社の「判断基準」や「価値観」についても伝承する役割を期待しています。ちなみに、社内トレーナーが研修に参加するのは、完全にボランティアの位置づけで、特に人事評価に加味されるような仕組みは当社にはありません。それにも関わらず、仕事の合間を縫って研修の現場にかけつけ、業務での関わりがない、初めて会う受講生に対して、適格なアドバイスをし、キャリアの相談にも乗ってくれています。会社全体で、次の世代を育てていこう、という熱意ある管理職が多いのも当社の強みです。2023年度は、18名の社内トレーナーに中堅社員向け研修に参加してもらいましたが、トレーナーを打診して断られたことはなく、皆が快諾してくれました。私自身は研修の運営責任者として、本当に本当に頭が上がりません。

    また、当社はOJTの育成水準の底上げにも注力しています。新人が配属された部署によって育成レベルにばらつきがあっては、ひとり立ちの時期や、成長実感の感じ方が人それぞれ異なってしまい、自律的な成長には繋がらないからです。こうした点について、当社では30年前から、「教育責任者・教育担当者システム」を取り入れています。各部門の「育成責任者」で構成される会議体と人事が中心となり、会社全体の育成水準の底上げを目的に活動しています。その時代その時代にあった新人育成の「あるべき姿」を議論しつつ、各部門が連携した教育プログラムの展開や運営を担っています。この活動の根底には、新人教育は配属先の管理職だけが負担するのではなく、会社全体で受け入れ体制を作っていくべき、という当社の考え方があります。
    この教育責任者システムの活動では、過去、色々な取り組みを行ってきました。その中で、約20年前に生まれたユニークなイベントがあります。「インタビューツアー」というものです。私は、これは発明レベルで素晴らしい育成施策だと考えています。(笑)

    ※インタビューツアーについては、末尾に記載

    社員のキャリアオーナーシップは「ごく自然にあるもの」

    なるほど。マクニカさんの中では、キャリアオーナーシップはかなり浸透しているように見受けられます。社員としては、どう思っていらっしゃいますか。

    伊藤:正直に申し上げると、マクニカでは、「キャリアオーナーシップ」という言葉はあまり使われていません。私たち、人事のメンバーも、言葉自体、知らなかったというのが本当のところです。ただ、マクニカにとって個人が主体性をもって取り組む「キャリアオーナーシップ」は当社で実践している取り組み内容からすれば、ごく自然なもの、と感じています。恐らく、社員の皆さんも同じように受け止めるのではないでしょうか。

    宇山:私も同感です。すでに根付いていた、という印象です。

    今後、社員のキャリアオーナーシップを育成するうえでさらに目指していることはなんですか。

    伊藤:当然、人事としては、これまで以上に社員一人ひとりを大切にすることです。そして、一人ひとりが自身のキャリア成功に向けて気兼ねなくチャレンジできる環境を提供することが重要だと考えています。今後も風土、制度、仕組みづくりなど、あらゆる観点から常に見直しをして、社員のキャリアオーナーシップを高める活動を支援していきたいと思います。

    構成:伊藤 ナナ・杉本 友美(PAX)
    企画:伊藤 剛(キャリアオーナーシップ リビングラボ)

    コラムインタビューツアー

    「将来の自分像を見つける」というテーマで、新人から先輩社員(管理職以上)に社内面談のアポイントを自由に打診できる期間限定のイベント(例年、5~6月に実施)。2023年度は1,800件を超えるインタビュー面談を実施。管理職以上であれば「本当に」誰でもアポイントの打診OKとしているため、会長や社長、副社長など、経営層との面談も積極的に実施されている。教育の観点から、「アポイントのとり方」、「面談中の話し方・態度」などの採点を先輩社員に依頼し、面談後に上司経由で新人にフィードバックすることで、会社全体で育成に取り組むことを体現している。

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