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キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第4期)

第2回 発表に向けて深めたい課題を話し合い、
共通言語化する

2024.09.17

研究会

日本を代表する48の企業と団体が集まり「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第4期」がスタートしました。第4期は「これまでの期で培った資産を活用して、キャリアオーナーシップ経営の新しい実践事例を作る」べく、議論を重ねています。
 
月1回開催する第4期の全体研究会の2回目となる今回は、1回目と同じく、分科会の発足を目指して、自社の人的資本の最大化する実践について課題感が近い企業同士でグループをつくり、1年を通して議論していくテーマのより具体的な絞り込みと共通言語化を行いました。また、その言語化された課題に対して、本コンソーシアム顧問である法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔先生(以下、タナケン先生)からコメントをいただきました。
 
本稿では、当日行われた各グループの議論後の発表内容を中心にご紹介します。

INDEX

    タナケン先生からのご挨拶

    タナケン先生:
    第4期が始まったことをSNSで更新しました。ぜひ、みなさまの社内にもお知らせいただきたいです。また、みなさんのSNSがもしあれば、LinkedInやX、facebookなどのリンクを教えていただいて、共有しあうのもよいですね。

    みなさんに社内にもお知らせいただきつつ、会社や部署を超えて、コンソーシアムとして1年を通じて交流していただければと思います。オペレーション的にはTeamsを使うとしても、インフォーマルな場をフラットに持っていただいて、「今日こういう研修が自社であるのだけれども、他社の方も参加できるから参加してみない?」といった交流をしていただけますと嬉しいです。
    「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」は、オンラインと対面の会が交互に発生します。オンラインには、オンラインの良さがありますよね。九州から参画されているチームもこうして集まることができるわけですから、ぜひオンラインの場も活用していきたいですね。

    テーマの言語化に向けて、各チームの発表

    タナケン先生:
    いま、各グループの会議室に入って議論を拝見しました。全体を見ると、すでにキャリアオーナーシップがなにか把握されて議論を始めているところと、個社ごとの課題共有にとどまっていて、共通言語を作るのに苦戦されているグループに分かれているようです。

    そこで、チームの共通言語化を支援するために1枚のスライドを共有します。

    昭和の時代、キャリアとは「組織内キャリア」にとどまっていました。その後、転職を前提とした「戦略的人的資源」という発想が生まれました。

    令和の時代は、さらにそれらの反省を経て「人的資本経営」という概念が生まれています。本コンソーシアムでは、人的資本経営に基づいた社員と組織の関係性を築くことを、第0期から大事にしています。その前提を経て、あまり細かい定義論にとらわれず、共通項を捉えていただけますでしょうか。

    〈グループテーマ一覧〉

    1. キャリアオーナーシップと組織/事業貢献の見える化
    2. キャリアオーナーシップ経営を促進するマネジメント層のキャリアオーナーシップ
    3. キャリアオーナーシップ人材を活かせる組織のつくり方
    4. 自ら考え自律的に動く人事
    5. リスキリングの場づくり
    6. 越境(副業/兼業含む)活動の事業実験
    7. キャリアオーナーシップ意識の理解/浸透/検証アクションの検討① ―全社的な理解浸透―
    8. キャリアオーナーシップ意識の理解/浸透/検証アクションの検討② ―特定世代への課題や具体的な社内の人材流動化アクションの推進―

    第1グループ:キャリアオーナーシップと組織/事業貢献の見える化

    私たちは2つの方向性を検討しております。ひとつめは、昨年を継続するプランです。

    昨年度はエンゲージメント調査などで、キャリアオーナーシップに特異な数字が出ているところと、個人業績の相関を出していらっしゃいました。一方で、データが新しいものに限られる会社さんが多いため、「キャリアオーナーシップが芽生えたあとで個人業績が高まった」と因果関係があるとまで言えるのかは曖昧です。そこで、今年は因果関係を立証できるか取り組んでいきたいと思います。

    もうひとつ、同時並行でキャリアオーナーシップに連動する「事業貢献が何か」を考えていけないかを第2のテーマに据えたいと思います。

    第2グループ:キャリアオーナーシップ経営を促進する
    マネジメント層のキャリアオーナーシップ

    私たちは、(1) 上司と部下の関係性 (2) マネジメント層の意識 (3) 制度・組織 に課題を分解しました。特に上司―部下の関係性については、課題を抱えている方が多かったようです。

    例示すると、こういった課題がありました。

    • 1on1をやっても、事務連絡にとどまってしまっている
    • ラダー型(はしご型)で1段ずつステップを登って上司になってきた人が、どうやって部下にキャリアオーナーシップを育成させられるのかわからない

    このお悩みが非常に多かったので、主軸として取り組んでいきたいです。

    第3グループ:キャリアオーナーシップ人材を活かせる
    組織のつくり方

    私たちは、「企業の思惑が反映されがち、かつ属人化しがちな組織のなかで、どうキャリアオーナーシップを育てるか」という課題を見出しました。そして、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」を通じ、多様なキャリアオーナーシップを高め、活用できる組織のあり方を探索できれば、各社が持ち帰れるアウトプットができるのではないかと考えました。

    特に、「各社さんでやっているキャリアオーナーシップを高める仕組み ✕ 共通の指標」を作ることにより、何がキャリアオーナーシップ人材を活かす組織のドライバーになるのかをモデル化したいというのが、我々の狙いです。

    第4グループ:自ら考え自律的に動く人事

    私たちは「誰かを動かす」というよりは、自分たちがどう変化していくべきかという話になりました。キャリアオーナーシップ概念は広まっているものの、人事部門内ですら道半ばにあるという現状を共有いたしました。

    また、人事から他部門へ提示できるキャリアが限定的で、自律的なキャリア志向を叶えられない現実が残っていることも明らかになっています。具体的には、(1) 専門性が高く配置転換が難しい部署があったり、(2) 部署の自律性が高く人事が介入できないところがあったりする、この2点についてどう動いていくかを議論していきたいと思います。

    特に、ホールディングスになっている会社さんでグループ企業を超え、いかにキャリアオーナーシップを達成していくかも包括していきたい狙いです。

    第5グループ:リスキリングの場づくり

    私たちは、「外部環境の変化にあわせ、社員が学んでいくことは大切」と言われていますが、実際に何ができているのかを見ると「できていないよね」という部分にアプローチする方法を考えています。

    リスキリングも言葉としては知られても、実際に社員がなにか取り組めているかというと、そうではない状況にあります。

    そこで私たちは、これらを議論していきたいと思います。

    1. 「なぜリスキリングが必要なのか」という「WHY」
    2. 組織が何を提供できているのか、という「WHAT」
    3. 最後にそれが社内でキャリアにどうつなげていくかの 「HOW」

    第6グループ:越境(副業/兼業含む)活動の事業実験

    私たちは、定量的に越境体験の事業貢献を示したいと考えています。特に、社内の越境活動について効果測定をしていきます。一口に「越境」といっても多種多様なものがありますので、特定の越境活動ではなく、複数の定量化にむけて取り組んでまいります。

    越境体験を行うと、個人・組織レベルでどのような定量的成果が得られるのかを調査するため、複数の越境活動のなかからいくつかにしぼり、調査していきたい考えです。

    第7グループ:キャリアオーナーシップ意識の理解/浸透/
    検証アクションの検討① ―全社的な理解浸透―

    第7分科会は、人数が多いため2チームに分かれて議論を行いました。

    1チーム目

    私たちは、「各社がキャリアオーナーシップの重要性を感じたときに、まず実践から始めていたため、経営戦略との連動が難しい」という議論を行いました。そこで、経営戦略が決まり、そこからキャリアオーナーシップへの実践へつながる図を作りたいという話がでてきました。

    2チーム目

    私たちは、「浸透度」といっても、各社によってどれくらい浸透しているかが異なるであろうと話しました。そこで、浸透度をまず分け、そのうえで浸透度にあわせた打ち手を分けて出す必要があるだろうという議論を行いました。

    特に、「キャリアオーナーシップがなぜ必要なのか?」でつまずいている社員も多いだろうという話も出ました。前期の白書を拝見しますと、キャリアオーナーシップの浸透に対する打ち手はある程度まとまっていましたので、その議論を踏まえ、より「打ち手を実践したらどうなるのか?」の実証を深く掘り進めたいと思います。また、前期で行われた年代での区分けとは別に、キャリアオーナーシップへのやる気で区分けしてみる取り組みを考えていきたいです。

    第8分科会:キャリアオーナーシップ意識の理解/浸透/
    検証アクションの検討② ―特定世代への課題や具体的な社内の
    人材流動化アクションの推進―

    第8分科会は、人数が多いため2チームに分かれて議論を行いました。

    1チーム目

    私たちは、個人と組織が強くなるためにキャリアオーナーシップを具現化しています。また、各社で多様な施策を展開し、事例になっています。一方で、浸透にはハードルもあります。社内に理解度、主体性に差があり、このまま走り続けていくだけではキャリアオーナーシップが浸透していかないであろうという課題が出ています。

    キャリアオーナーシップ施策を人事だけの小さな取り組みとして終わらせないためにも、社員のネガティブな反応を整理・分析し、障壁をクリアにしていきたいです。そうすれば、キャリアオーナーシップを推進するうえであらかじめ陥りがちな罠がわかり、それを乗り越える方法が明確化できるのではないかとの考えです。

    特に、キャリアオーナーシップを推進するとどういう望ましい状態が起きるのかというゴールを示すことで、現場マネージャーの協力を得ていく必要があるのではないかと議論しています。

    2チーム目

    私たちは、キャリアオーナーシップの意識にふれる機会がない特定層へのアクションを議論しました。参画されている皆様はキャリアオーナーシップの重要性を理解しているものの、当然ながら社全体になると熱意の差がでてきます。人事がキャリアオーナーシップ研修を社員に実施しても、そこに来てくれるのはキャリアオーナーシップ意識の高い社員ばかりになったり、受けた方の中でも温度差があったりするのが実情です。

    また、現場の社員からマネージャーに部署異動やキャリア変更の相談が上がってきたとしても、それを否定するマネージャーがいるのは事実です。その結果、潰れていってしまう社員がいますので、それをどう防ぐかについて話していきたいと思います。

    タナケン先生からのコメント

    アドバイスできるポイントとしては「0から1でやろうと頑張りすぎない」ことです。たとえば、効果測定の指標をゼロから作ろうとすると、とても苦労します。すでにこれまでの期で作った指標や実績がありますので、ぜひ事務局に相談しつつ活用してください。

    みなさんに次回までの間で、改めて第1期から第3期への白書、そしてすでに2冊出ているキャリアオーナーシップの書籍をご覧いただいて、これまで培ったものをさらに成長していただければと思います。ありがとうございました。


    前回・今回の研究会での議論を経て整理された「課題感」を軸に、分科会の課題テーマを決定し、それぞれの企業が改めて取り組みたい分科会に参加します。次回は、いよいよ分科会キックオフです。

    構成:伊藤 ナナ・杉本 友美(PAX)
    企画:伊藤 剛(キャリアオーナーシップ リビングラボ)
    グラフィックレコーディング:松田 海(ビズスクリブル株式会社)

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