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キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第3期)

第4回 キャリアオーナーシップを日本企業へ真に浸透させるための議論を分科会ごとに開催

2023.11.21

研究会

日本を代表する38の企業と団体が参画する、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第3期」の、全体勉強会4回目が2023年10月17日(火)に開催されました。
 
分科会は7つのテーマに分かれ、中間発表に向けて議論を積み上げています。今回は個別のグループに分かれ、コンソーシアム顧問の田中 研之輔先生(タナケン先生)からフィードバックをいただきました。
 
本稿では、第4回 研究会で進んだ各分科会の議論と、タナケン先生からのフィードバックを中心にご紹介します。

INDEX

    第1分科会 マネジメント層自身のキャリアオーナーシップ意識とメンバーのキャリアオーナーシップ推進

    このチームでは、マネジメント層が「内発的動機」から、キャリアオーナーシップを推進することは難しいだろうと考えています。以前、タナケン先生からいただいたフィードバックに準じるかたちです。そこで、マネージャーの行動を促す外発的動機づけの手段をまとめました。

    上記のスライドは、各社が「外発的動機」をExcelで書いてきたものを抽出し、図に落とし込んだものです。課題のスコープが定まってから、検証手段を決めるつもりです。すでに列挙されている検証テーマが多いため、優先順位付けをしたいと思います。

    タナケン先生のフィードバック

    着実に進んでいますね。これは、野心あるゴール設定かもしれませんが、本チームのみなさんに踏み込んでほしいことが1つあります。それは、「マネージャーのキャリアオーナーシップと、評価の関連性」です。

    マネージャーは、組織で評価されたからこそ、マネージャーになっていますよね。ただし、マネージャーは中間管理職ですから「次」も見据えていくことになります。そこでキャリアオーナーシップを持つことが評価されないなら、マネージャーは誰もキャリアオーナーシップ推進をしないですよね。

    少なくともマネージャー自身のキャリアオーナーシップに対する取り組みが、上長からどう見えているのか。そして、マネージャーのキャリア行動評価でどう見られるか。この2つは、事例をもとに自社のキャリアオーナーシップの評価方法として明らかにしたほうが良いでしょう。

    キャリアオーナーシップは、素人から見ると「自分の好きなことをやっていい。組織と違うことをやってもいい」と誤解されがちです。企業の成長という観点で見ても、キャリアオーナーシップが持続的なエンジンになりうるのだということを、今回見せる必要があります。

    ――おっしゃるとおりです。マネージャーの全体評価の中で、「キャリアオーナーシップ育成」はせいぜい10~30%くらいに留まります。キャリアオーナーシップよりも、ビジネスの成果が評価されやすい面があるからです。そのため、マネージャー層が何のためにキャリアオーナーシップを高めるのか、目的が曖昧です。「ビジネスとしての成果を出すエンジンとしてキャリアオーナーシップが必要だよね」という話が出てこなければと考えています。

    キャリアオーナーシップに関する評価は定量的なデータで判断することが難しいかもしれません。売上などはわかりやすい定量的な指標ですが、複合的な要因で決まるため、必ずしもマネージャーのキャリアオーナーシップが向上したからと判断することはできない。ただ、「キャリアオーナーシップを上げるとチーム内のエンゲージメント・スコアは○%上がる」という提言はできるといいと思います。

    ――ぜひ取り組みたいです。ただ、他のチームがインパクト計測を行っていますよね。他の分科会とテーマが重ならないようにするためには、どうしたらいいでしょうか。

    「第3分科会 キャリアオーナーシップと事業貢献の見える化」の話ですよね。あちらは定量的なアプローチをしています。ですから、この分科会では「部署ごと、部門ごと」で見てはいかがでしょう。たとえば、ある方がマネジメントしているメンバーが20人います、といった小規模の対象群で調査してみることをおすすめしたいです。

    普遍的なKPIに落とし込もうとすると、人事施策は測りにくいもの。今回、5万人は調査できなくても、20人なら深く調査ができます。

    あとは、私から気になるところをひとつ。「キャリアオーナーシップ型じゃないマネジメントはこれからそもそもありうるのか」という点も、議論していただきたいです。新しいチャレンジをせず、部下をトップダウンで管理するマネジメントは、これからの組織でそもそも評価されていくのでしょうか。私は、厳しいと思います。けれど、「弊社ではそういう人のほうが評価されて上がっちゃうんです」というケースもあるかもしれませんよね。そこも見ていきたいです。

    第2分科会 越境体験の実践体系づくりと効果検証

    私たちは越境体験を第2期からさらに発展させるグループです。そこで、対象者と項目の2軸で、すでに越境体験を実現している法人へヒアリングしたいと思っています。現在は、ヒアリング内容をメンバーで出し合って並べているところです。

    できれば10程度の施策を、各社へヒアリングしたい考えです。

    タナケン先生のフィードバック

    この分科会では、越境体験を実現することの意味や効果について探ってほしいと思います。越境体験を用意すると、社員の本業におけるアウトプットの質が高まるとするデータは存在します。これが今回のヒアリング先でも実現しているのか、改めて検証したいですね。

    ――実は、まだ検証までやるかどうかは、決めきれていないところです。

    そうですね。検証だけを目的にしろという話ではないのですが、たとえばある企業の社員さんが「いま、このタイミングで越境したほうがいいんですか?」と発信してくれたとき、「あなたへはこの越境体験がおすすめです」くらいはお伝えできる仕組みを作りたいです。そうなると、もう少し具体的な数字がほしいかなと。

    調査というよりも、「越境体験の体系、カリキュラムづくり」が期待している成果です。こうやるとキャリアがうまくいくよ、というカリキュラムを作ってあげる。

    たとえば、「同じ業務を3年目続けているAさんは、本業を8割、越境体験を2割の配分で働くのがおすすめです」、逆に「新しい部署に来たばかりのBさんは、慣れるまで越境よりも本業に集中しましょう」と提案できるくらいのアウトプットを想定しています。そのうえで、たとえば、Aさんは水曜午後だけ越境、みたいな感じで割り当てる。そうすれば、週休3日制といった施策よりも、面白いと思うのです。

    ここまで我々が越境をお膳立てすること自体がキャリアオーナーシップの概念と対立するかもしれませんが、逆にそこまで見せてあげないと、キャリアオーナーシップを持てない人が多いのも現状です。「あなたが越境体験のリストからやりたいことを決めてね」と提示しても、社員さんは動けないと思います。

    とはいえ、分科会のみなさんも、怖いと思うのです。そのカリキュラムが正しいとは限らないと。ただ、コンソーシアムはそうやってA/Bテストをやって実証していくために存在しています。これから細かくチューニングします。こちらはベータ版です、という状態でチャレンジできるのです。

    ――今回作る、「はたらく未来白書 2024」は人事担当向けだと思っていました。タナケン先生は、この白書を個々の社員向けに作る理解でしょうか。

    たとえ人事向けでも、越境体験を導入するまでの地図が必要な点は変わらないと考えています。かつて、第2期では「キャリア1on1をするなら、こうしてください」という手引を用意しました。そうしないと、やり方がわからない。人事にイチから作ろうと言っても、作れないはずです。暫定的でも構いませんので、越境体験を導入するうえでの体系的な地図と順序を見せたいですね。

    第3分科会 キャリアオーナーシップと事業貢献の見える化

    本分科会は、大きなゴールの前段階で「キャリアオーナーシップが高い人・低い人」の定義を、それぞれシェアしました。キャリアオーナーシップの高さ、低さの定義は個社で違いますが、それを一律で揃えるべきかディスカッションし、画一化しないことで合意しています。

    続けて、キャリアオーナーシップが高い人と低い人のギャップがどこにあるのか仮説を立てています。社員のセグメントを3つ程度に分ければ、各社共通点を見いだせるのではないかと見ています。

    最後に、事業貢献の評価軸は揃えたいと考えています。現状では退職率などが候補に挙がっています。企業間で比較するためにも、職種・年齢・男女など、分析する分類は共通化していきたいです。最終的には、各社で環境が違うなかでも、共通する仮説を発見できたらいいなと考えています。

    タナケン先生のフィードバック

    キャリアオーナーシップを定義していくと、変数の単位は個人になりますよね。しかし、事業貢献を考える場合は、個人の貢献度の総和が成果とイコールになるわけではありません。チームのパフォーマンスは、各個人の相互作用の影響を受けるからです。では、どうやって個人、そしてチームとキャリアオーナーシップの相互関係を明らかにするか。これが課題になるかと思います。

    「チームにキャリアオーナーシップが高い人がいるので、事業貢献できています」という図式だけなら、とてもわかりやすい。しかし、現実にはキャリアオーナーシップの低い人がいても、事業貢献しているチームが出てきます。この差はどう説明していくのかは非常に難しい問題ですが、チャレンジしてみて欲しいですね。

    ――おっしゃるとおり、エンゲージメントが高い個人がいても、組織にはエンゲージしていないことがあります。たとえば、会社へ貢献する気は失っていても、外で楽しく副業されている場合、キャリアの引力は外に向きますよね。

    もちろん、「社内にキャリアオーナーシップの高い人が増えていくと、事業貢献度が高くなる」というストーリーができたらきれいですが、そうではない可能性もあります。そして、キャリアオーナーシップが低くても事業で成果が出るケースを全否定する必要もありませんよね。

    そういったケースも含めて、パターン化したいですね。いくつかの設問をYES・NOで分岐させれば、6つ、8つと組み合わせができます。その掛け算がほしいです。

    第4分科会 現場第一線で働く人財のキャリアオーナーシップ意識改革

    今回、現場で働く方のキャリアオーナーシップを高めるにはジョブ・クラフティングの要素を入れたらいいのではないかというフィードバックをタナケン先生からいただきました。それを踏まえ、以下の図を作ってみました。

    ※ジョブ・クラフティング……従業員が仕事を主体的にとらえなおし、自らやりがいを感じられるようにするためのトレーニング。

    この図は、仕事に対する向き合い方を場合分けしたものです。自分のキャリアを自ら切り開いていける人を「ジョブクラフター」とするならば、ジョブクラフターほどの主体性はなかったり、仕事に対する理解や解像度が低い人は、上司の後押しや仕事のやりがいを知ることが打ち手になりそうです。一方で、仕事自体に対する意識が低い人の場合、配置転換なども視野に入れる必要があると考えます。

    タナケン先生のフィードバック

    この場合分けにおける「仕事自体が嫌い」という選択肢が少しやっかいです。というのも、仕事が嫌いな人は、業務関連の調査に答えなくなるものなのです。

    他の社員の前で「僕は仕事が嫌いです」とは言えない。そんなことをインタビューで答えてしまったら、今後のキャリアがどうなるか不安になりますからね。また、場合分けしたすべての対象をインタビューされようとしていますが、これでは工数が多すぎて負担が大きいかもしれません。

    そして、この場合分けを分析していった結果、分科会として何の答えを求めたいのか、教えていただけますか。

    ――私たちが知りたいのは「キャリアオーナーシップが現場に浸透していない理由は何か」ですね。

    いいですね。この疑問を紐解いていくと「仕事はすごく楽しいけれども、全くキャリアオーナーシップがありません」という人も出てくると思います。そうなると、今度は図に描かれたような「キャリアオーナーシップが低いと、仕事が楽しくない」という関係性が成立するかがわからなくなります。さらに、「仕事は楽しくないけれど、私のことは放っておいてください」という方もいる。実は、こういう方にこそキャリアオーナーシップは必要なのですが、どう浸透させたものか。さまざまな論点がありますね。

    少なくとも今、この図を拝見すると (1)キャリアオーナーシップを推進していくべきリーダーが、なぜ推進していないか。(2)現場で活躍する社員と、キャリアオーナーシップにはギャップがあるか。この2つが同時並行で走っています。負担が大きすぎますから、論点をどちらかに絞ったほうがよいでしょう。

    もしくは逆に、「仕事が嫌い」と考えている方ばかり集めて、エッジの効いた調査にしてもいいと思いますね。もともと、仕事が好きで、うまくいっている方はキャリアオーナーシップを持つということは、過去のコンソーシアムでわかっていますから。

    その場合は、簡易アンケートで「この方がきっと、仕事を嫌っている方だね」と目星をつけて、インタビューします。

    インタビュー対象がどのグループになるかに関わらず、「キャリアオーナーシップが現場で浸透しない」ことへの対策を明らかにできれば、意識改革の答えになると思います。とても難しいテーマですが、頑張ってください。

    第5分科会 キャリアオーナーシップ浸透の実践における課題と打ち手

    私たちの分科会は、まずプロティアンキャリアの構想に従ってキャリアオーナーシップが浸透しないパターンを作ろうと考えました。すなわち、アイデンティティ(自分のやりたいことに気づけているか)と、アダプタビリティ(変化に適応できるか)の2軸で分類しようと考えたのです。

    (1)アイデンティティも、アダプタビリティも高い
    (2)アイデンティティが高い・アダプタビリティは低い
    (3)アイデンティティが低い・アダプタビリティは高い
    (4)アイデンティティも、アダプタビリティも低い

    これはもともと、富士通の4象限にインスピレーションを受けていますが、それぞれで打ち手を作ってみたいと思います。キャリアオーナーシップ人材としては、(1)のアイデンティティも、アダプタビリティも高い人が望ましいですよね。ただ、どちらも低い人とはどんな人なのか、今のところ想像するのは困難です。

    タナケン先生のフィードバック

    たとえば、社員のプロティアンキャリアを診断して、診断結果から「(4)アイデンティティも、アダプタビリティも低い」と分類された人を、どう「 (1)アイデンティティも、アダプタビリティも高い」ステータスへ持っていくかということですよね。

    分類して、その後何をしようと思っていますか。

    ――どういう分け方があるかな、で議論が止まってしまっていますね。

    (4)のグループを、(1)にするためにどういう打ち手があるか、という話ができたらいいんですが、そもそも各項目の定義で止まってしまっているのですよね。でしたら、一度定義の話をやめて、キャリアオーナーシップ診断で(4)と分布された人へインタビューして、どうするか考えてみてはいかがでしょうか。

    そもそも、アイデンティティ・アダプタビリティのいずれも低い(4)のグループが多い、というのが問題なわけです。日本の大企業では、おそらく50~60%が(4)に属すると思われます。そして、(2)や(3)が10~15%、アイデンティティ・アダプタビリティどちらも高い(1)に至っては、10%くらいでしょう。

    本当はこの比率を、逆にしたいのです。では、その打ち手は何か。もっと言えば、打ち手はすでにあるけれども、なぜそれが機能していないのか。

    • 社内制度を知らない
    • 社内制度を知っていても、自分が該当する制度だと思っていない
    • 社内制度の仕組みが自分に届いていても、自分ごとにとらえられない

    こういった、いろいろな要素がありますね。

    では、象限を移動する社員には何が起きるのでしょうか。それを明らかにすれば、打ち手になります。もしこういったゴールを目指しているのでなければ、思い切ってこの4象限を使うことを、やめたほうがいいでしょう。

    さらに、(4)のグループを場合分けしてもいいですね。どういう言葉がけで、どういうアプローチをすれば(4)のグループがキャリアオーナーシップを考えてくれるのかを、知りたいですね。たとえば、社内イントラネットに掲載されても見ない人には、マネージャーから見せるべきなのか。といったことです。

    ――あまり定義論にこだわらず、そこを追求したほうがいいのかもしれないですね。

    そうですね。また、(4)のグループの話は、「悪者探し」になりがちです。ただ、一見(4)に見えるだけで、本当は能力がある方もいます。週末は元気で、地域のコミュニティにコミットできるような人が、会社では「できない人」を演じているようなケースです。

    ただ、そういう方へキャリアオーナーシップの話をすると「昔やろうとして、潰されたんですよね」って語ってくださることがある。そういう経緯があったから、仕事外に頑張りどころを設けたと。

    そういう人は(4)のグループでも、活発ですよね。キャリアオーナーシップを持つポテンシャルがある。そういうパターンも見ていきたいです。ですから、(4)の診断結果が出たからといって、悪者ではない。(4)は組織との関係性で(4)になっているだけですよ。というメッセージを出す必要があります。

    第6分科会 キャリアオーナーシップ推進とリスキリング

    分科会で事前に議論しておりました。そこでみなさんの意見をまとめたものを共有します。

    図解のリスキリングの定義については、経産省のものを取り上げました。リスキリングは取り組めている企業とそうでないところがまちまちのため、背景事情を記載しました。

    続けて、社員を3つの年次グループに分け、課題を洗い出しました。

    36~45歳は眼の前の仕事で手一杯な方々です。そして、キャリアオーナーシップの二極化が始まっていく世代ですね。キャリアプラトーをこれから迎えるのですが、リスキリングには結びつかない。

    さらに二極化していくのは、46~55歳のグループです。50代くらいからは、加齢にともなう変化も出てきます。

    会社から与えられる成長機会が若手と比べて減ってしまうため、スキルを身につけたければ枠を自分で取りに行かねばならない。ここで外的なキャリアに執着してしまうと、いわゆる役職退任後の変化についていけなくなってしまうおそれがあります。

    そして56歳以降のグループです。60歳で定年退職となる会社が多いなかで、自分たちはどう頑張るべきか。会社から自分への期待値が薄くなっていると感じてしまい、取り残されやすい世代でもあります。

    価値観が固定してしまって、なかなか変化についていけないとなると、リスキリングには結びつかなさそうです。シニア層における育成体験も、まだ整備されていません。

    これらを踏まえ、人生の各フェーズでリスキリングに取り組めるならば、選択肢の上(緑色)、取り組めない場合は選択肢の下(赤色)になっていくことがわかる、フローチャートを作りました。場合分けをしたうえで、それぞれの場合でシニアになった当事者がどのようなマインドなのかを記載しています。

    タナケン先生のフィードバック

    いいフローチャートですね。選択肢の上側(緑色)に行くために、何をしなくてはいけないかを明らかにしていければ嬉しいです。「なぜ、リスキリングが必要なのか」を明確にしたいですよね。おそらくその答えは、本人の幸せに繋がるからなのですが。

    それに対して、リスキリングは今「やらされ感」があります。政府主導で、また何か新しい言葉を言い出したねと思われている。そこをひっくり返す必要があります。特に、多くの企業でリスキリングは業務外時間に行われています。それは良くないことですね。休日に「リスキリングしてね」などと言っても、誰もやりません。

    たとえば「コンソーシアム加盟企業は、水曜○時にリスキリングをする」と、業務時間内で枠を決めて取り組むのもいいですね。

    有志活動 人材流動化と事業貢献の両立によるキャリアオーナーシップ支援

    現時点ではまだ、アイディアを広げているフェーズです。キャリアオーナーシップ視点での人材流動を狙うときに、どういったシナリオがあるのか。そして、どうやって経営戦略と人材の流動化を繋げていくかについて、話し合っています。

    タナケン先生のフィードバック

    他のチームは施策を考えているなか、現象を分析しているこのチームは面白いですよね。「キャリアオーナーシップにおける人材流動化とは何か」ぜひ、定義したいです。ところで、ここに書かれている「人材流動化」とは、社内での異動ですか?

    ――基本的には、社内での流動化です。グループ会社や子会社も対象です。

    施策でいうと、兼業や社内インターン制度?

    ――副業と社内公募制度を考えています。

    そうなると、「越境」と言葉が被りますね。でしたら、社内越境という言葉にまとめると、コンソーシアムで言葉のブレがなくていいかもしれません。また、兼業・副業のみならず、幅広く施策を見てもいいですね。

    たとえば、会社によっては「お試し異動」という制度があります。まず異動してみて、合わなければ出戻りできるシステムです。そういったものも、組み込んでいきたい。

    さらに、ある会社は異動すらも手挙げ制にしました。そして、若手がバンバン異動できるようにした。そうしたら、一部の若手が異動・異動・異動を繰り返す「社内ジョブホッパー」になってしまったのです。それは望ましくないですよね。その点を考えていただきたいです。

    ただ「人材を流動させましょう」と言ってしまうと、闇雲な異動を推進することにもなります。いいプレーヤーが現場にいて、活躍しているのに兼業や異動をさせるのは、果たして正解でしょうか。そこのケース別の分析が可視化できるといいですね。また、多くの大企業ではキャリアオーナーシップのビジョンにはそぐわない異動も起こりえますよね。その異動をどうとらえるか。

    異動も含め、適切なレベルの社内人材流動化が起きなければ、事業がグロースしません。では、「適切な人材流動化」とはどれくらいの流動性なのか。適切さを決めるのは経営層か、上長か、本人か。誰が、どのタイミングで、どこに流動するのがキャリアオーナーシップ上望ましいのか。それも考えてみていただきたいです。

    まとめ

    タナケン先生のコメント

    どのチームも一生懸命進んでいます。ぜひ、勇気を出してデータや仮説、枠組みの雛形を作っていただきたいです。

    検証モデルがなければ簡易版で作り、体系的な図がなければ設計を試してみる。3年後から振り返って、ちょっとズレていたって全然構いません。「2023年の段階ではこの方向性に検証を進めていて、アクションプランはこうでした」と、残せることが大事です。

    ここには大きな企業の方が多くいらっしゃるから、あまり大きなミスをしたくないと考える方が多いですよね。けれど、「とりあえず、こうしてみたらいいんじゃない?」という創発的な考えを持ってみてください。最初から正解を求めなくてもいいのです。デザインをしていきましょう。

    構成:伊藤 ナナ・杉本 友美(PAX)
    企画:伊藤 剛(キャリアオーナーシップ リビングラボ)
    グラフィックレコーディング:松田 海(ビズスクリブル株式会社)

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