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キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第3期)

第3回 7つの課題テーマに基づいた課題共有と今後のアウトプット方針決定

2023.10.17

研究会

2023年9月19日、日本を代表する38の企業と団体が参画する「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第3期」の研究会3回目が開催されました。今回は、第3期参画企業・団体の要望に応じてテーマを7つに絞り、分科会ごとに議論しています。参画企業には半日かけて「年末に向けてのアウトプットの形」を議論していただき、コンソーシアム顧問の田中 研之輔先生(タナケン先生)からフィードバックをいただきました。
 
こちらの記事では、第3回 研究会でどんな話が繰り広げられたのか、各分科会の発表および、タナケン先生からフィードバックいただいたコメントを中心にご紹介します。

INDEX

    7つのテーマが確定

    コンソーシアム内で議論していく、7つのテーマが確定しました。

    第3期 7つのテーマ分科会

    1. マネジメント層自身のC/O意識とメンバーのC/O推進
    2. 越境体験の実践体系づくりとC/O効果検証
    3. C/Oと事業貢献の見える化
    4. 環境第一線で働く人財のC/O意識改革
    5. C/O浸透の実践における課題と打ち手
    6. C/O推進とリスキリング
    7. C/O推進における人事部門の変革アクションの実証

    この分科会活動と並行して、以下の有志企業による活動も実施していきます。

    第3期 有志活動

    1. 第3回 相互副業 実証実験
    2. 企業内研修の相互留学 実証実験
    3. 人材流動化と事業貢献の両立におけるC/O推進に関する調査
    4. C/O経営診断の指標策定

    分科会ごとの議論とタナケン先生のフィードバック

    第3回の研究会では、各分科会に分かれてアウトプットの方向性について議論を行った後、各分科会からの議論内容の発表とタナケン先生からフィードバックを行いました。

    第1分科会 マネジメント層自身のC/O意識とメンバーのC/O推進

    テーマとして「マネジメント層とメンバー」の2グループに対するC/Oの推進が求められていますが、メインは「マネジメント層のC/O」にしよう、ということで合意しました。

    続いて、前提となる「マネジメントの定義」について議論しました。マネジメント層といっても、人事権がある部長クラス以上が対象なのか、それとも人事権がない課長クラスも対象にするのかで、対象者が大きく異なります。続けて、社内で「マネジメント」という言葉がそもそも定義されているか、いないかで分類しました。3つ目に、経営からC/Oのあり方についての発信あり、なしでも分類しています。

    その後、マネジメント層へC/Oを推進するうえでの課題を大まかに議論しました。そこで出てきたのは、「マネジメント層が忙しすぎる」という話でした。そこで「部下のC/Oが育つと、上司が楽になる」というストーリーで、C/Oを推進したいという話をしました。

    まずはこれらの論点を整理して、マネジメントのC/O推進をしたいです。

    タナケン先生のフィードバック

    ありがとうございます。追加で、新卒から叩き上げでマネジメント層になった方と、中途でマネジメントとして入ってきた方も分けていただきたいです。それまでのキャリアによって、マネジメントの定義は大きく異なることが想定されます。

    また、特定の部署内だけで通用する業務遂行のフィードバックのみ受けてきたけれども、今後C/Oを達成するうえでは越境が必須となる方もいらっしゃるはずです。これらの分類を踏まえて、議論を進めていただければと思います。

    第2分科会 越境体験の実践体系づくりとC/O効果検証

    私たちのチームには、「越境体験」へ積極的な取り組みをされている企業が多く参加しています。そのうえで課題を洗い出すと、個社の状況によってやれることの差が明らかになりました。

    たとえば、越境に前向きであっても、事業によっては専門性から他社の人材を受け入れづらいケースもあります。そのため、各社へのヒアリングをもとに、越境プログラムを整理したいと思います。

    タナケン先生のフィードバック

    さらなる発展として、多元的な軸を作ることも検討していただけますでしょうか。たとえば、「これまでに越境経験がある・ない」といった軸もほしいです。そして、X軸とY軸を固定するのではなく、「ある2軸のときは、こういう図になる」「別のX、Y軸のときはこう変化する」といった多面的な分析がほしいです。こういった効果検証は難しいと思いますが、外れてもいいとは思うので、試すだけでもやっていただけますか。

    越境体験については第2期でもうまく整理されていますから、ゼロから議論を始めずにうまく2期のまとめをインストールしていただきたいですね。最終的には「私はこの軸で、このフェーズにいるから、この越境プログラムを選ぼう」と、個別に社員が選べるような図解になっていると素晴らしいと思います。

    第3分科会 C/Oと事業貢献の見える化

    私たちは「事業貢献の見える化」ということで、まずはどんな数字で事業貢献が測定可能か、仮説を立てました。その例に出たのが、残業時間や離職率などの数字です。

    そして、どこに注力するかについて議論しました。たとえば、事業形態、業界の成熟度などで切り分けています。面白い切り口ですと「各社のキラキラ事業部門」はどうかな、という意見が出ました。会社によってマーケティング、経営企画、営業など、花形部門が異なりますよね。この花形部署においてC/Oがどれくらい事業貢献につながっているか可視化したいです。

    タナケン先生のフィードバック

    今まで、効果検証と言えば「データを捕まえに行くこと」が前提としてありました。ただ、これからは単一のデータではなく、関係性を出さねばなりません。これが難しい。特に、事業貢献は因子が多いですよね。難易度が高い課題を持つチームだと思っています。

    ぜひ、存分に悩み続けてください。結果、「キレイなアウトプットは出ませんでした」でも仕方ない。それくらい、このチームの課題は難しいと思います。「事業貢献ってなんだろう?」と、深く悩むと思います。ぜひ、他のチームからも支援がほしいです。

    第4分科会 環境第一線で働く人財のC/O意識改革

    私たちはまず、C/Oの定義を考えました。そこで生まれたのが「じぶんのキャリアはじぶんで切り拓く」です。これができる人なら、C/Oがあると定義しました。

    そのうえで、「現場」という抽象度が高いキーワードを定義し、パターン分けすることで、どの企業にも適用、見える化できるようにしようと考えました。

    現場のパターン1 定型業務を主とする現場の方
    例)販売員や生産工程の工場員など、マニュアル作業が多い方
    「そういった方に本当にC/Oは必要か?」

    現場のパターン2 限定的なキャリアパスを持つ方
    例)営業職で働き、営業一本で出世してきた方
    「C/Oを持ったとしても、営業から変わる道があるといえるだろうか?」

    現場のパターン3 キャリアパスが非限定的な方
    例)マーケティングから営業に異動したマネジメント層
    「C/Oが浸透していないとしたら、その理由はなにか」

    まずは、参画されている企業さんのうち、どの企業がどのパターンに当てはまるかを見える化したいと思っています。

    タナケン先生のフィードバック

    C/Oが進んでいる企業を見ても、現場の社員には届いていないケースが多く見られます。では、なぜ届いていないのか。そしてどうやったら、意識改革や行動変容まで起こせるか。そこが要点になるかなと思います。その点、このチームが定義したC/Oの「じぶん」すらひらがなであることは重要ですね。「自分」という言葉すら、C/Oを難解に見せているのかもしれません。

    第5分科会 C/O浸透の実践における課題と打ち手

    C/Oの実践ということで、第2期で「企業文化の醸成と適合」の分科会がやっていたことを踏襲し、発展させたいと考えています。このチームには叩き上げの人事があまりおらず、異動したての人が多くいます。

    そこで、各部署の経験を持ち寄る形で、実践の課題を出しました。「いったいどういう人がC/Oを持っていて、どういう人は持っていないのか」を分類しないと、打ち手が出ないよねという議論になりました。そして、C/Oを持てていない方には、持ちうるようなシーンを作る必要がありますね。現時点でどうすべきかの結論はありませんが、今後その多面性をクリアにしていきたいです。

    タナケン先生のフィードバック

    「浸透・実践」というフレーズには、時間軸が2つありますね。プロセスを作る部分と、アクティベーションは別ですから、それをまず意識していただきたいです。

    そして「反応がない」ことに対する調査は意義深いですね。というのも、「無反応」に対しては、アカデミックなアプローチだと手がでないからです。興味がない人は、調査したくてもヒアリングに来てくれないからですね。

    ところが会社の業務命令なら、興味がない人を呼び出すことができます。そして、なぜC/Oに興味がないか、聞くことができる。免許の違反者講習のように、嫌々でも社員が教えてくれます。これをC/Oの推進ではやる必要がありますので、ぜひチャレンジしてください。

    第6分科会 C/O推進とリスキリング

    私たちは、リスキリングに対して後ろ向きな層へ、いかに前向きになっていただくか議論しました。特に、年代によってリスキリングに後ろ向きとなった理由も違うであろうと仮説を立てて、「~35歳・36~45歳・46~55歳・56歳~」の年代に分類しました。

    そして、各年代にて楽観vs悲観で分類したいです。楽観はこのままリスキリングしなくても逃げ切れるよね、と考えている方。悲観は、このままじゃだめだと考えている方です。楽観、悲観、それぞれの社員を分けて打ち手を出したいです。

    また、リスキリングを「外省的リスキリング」と「内省的リスキリング」に分類しています。そのうえで、外的要因にしなやかに対応するためには、自ら資格取得を昇格と紐づけるなど、内省的なリスキリングにフォーカスを当てる必要があると考えます。

    タナケン先生のフィードバック

    35歳でもC/Oに熱心な層と、全然リスキリングがいらないと思っている層がいますよね。
    年齢でのアンコンシャスバイアスにくくられないで、なぜ35歳でも後ろ向きなのか、といった分析をするのは大事ですよね。リスキリングは来年もバズワード。来年外部の方が「はたらく未来白書」を見るなら、リスキリングから見ると思います。頑張っていただきたいです。

    そして、働きながらのリスキリングって難しい。たとえば、一生e-ラーニングやれと言われても、やる気が続きません。ですから、メリハリが必要ですよね。「秋はリスキリングの季節」みたいに。アカデミックにおける、サバティカルのイメージです。このあたりも検討していただきたいです。

    第7分科会 C/O推進における人事部門の変革アクションの実証

    私たちはC/O活性化施策における、人事部門のHOWを見える化する施策が必要だなと議論しました。まずは人事部門でC/Oの育成に成功している企業にヒアリングしたいです。そのうえで、進んでいるところ・進んでいないところが明らかになれば、HOWの改善ができると思っています。

    タナケン先生のフィードバック

    人事、つまりここにいる方々が対象ですね。他のチームと比べると、的を絞った議論をやりきれそうですから、みなさんに協力していただきつつ、進めてください。変革アクションが100個くらい出てくるのではないでしょうか。ぜひ、今の段階でC/Oの育成ができていないチームを追いかけ、盛り上げてほしいですね。

    過去、組織内キャリア型の人事制度における人事部の立ち位置は、管理部門に過ぎませんでした。その前提を壊さねばなりません。みなさんがいらっしゃる人事は花形だと思っていただかねば、C/Oの推進は難しいでしょう。頑張ってください。

    任意参加プロジェクト「人材流動化と事業貢献の両立によるC/O推進に関する調査」

    コンソーシアムでは、参画企業が必ず1つは参加する分科会活動のほかに、有志で集まった企業で行うプロジェクトも存在します。今回は、その中の一つ「人材流動化と事業貢献の両立によるC/O推進に関する調査」についてタナケン先生からフィードバックをいただきました。

    私たちは人材流動化と事業貢献の両立については、他社さんの成功事例をアンケートから学んで、ポートフォリオを作っていければと思います。

    現在、さまざまな企業で「離職防止のためだけに」C/Oを導入するという視点があります。つまり、C/Oは経営や事業の成長に必須の要素だというシナリオが描けていないのです。そのストーリーを作っていきたいです。

    タナケン先生のフィードバック

    これからアンケートを作って、調査していただくわけですね。人材流動化の「流動」とは何でしょう。流動だとネガティブなイメージがないかなと。躍動、人的資本の最大化といった表現にしたいですよね。社員が手あげして、「次のところ行きたいです」と異動し、活躍する。こんな流れをポジティブに分析していただきたいです。

    おわりに

    各分科会で今後、継続して議論していくにあたって、タナケン先生から全体へのフィードバックをご紹介します。

    タナケン先生:

    フィードバックは3つにまとめました。

    1. C/O経営は多角的、多層的です。たとえば「こうすればC/O経営が実現できる!」といった突破口はまだわかっていません。そのため、点では分析できません。今回も、7つのグループに分かれて手法を模索していきたいです。
    2. C/Oは自然に浸透しません。みなさんの会社には伝統があります。そして、歴史的に「社員の働き方・成果の評価方法」が決まっています。そこへ新しい風を入れる。ビッグプロジェクトです。だから難しい。
    3. C/Oを実現するためには、戦略性とストーリーが必要です。データに基づく戦略が必要なのは当然としても、正論をぶつけただけでは変わりません。だからこそ、社内を説得するストーリーが必要です。

    そして、ここからはフィードバックではなくアドバイスです。

    自律型キャリアに転換し、C/O経営を最大化するためのポイント

    みなさん、とにかくいろいろなチャネルでC/Oの重要性を発信してください。私など、X(Twitter)で10分に1回は発信しています。社長がタウンホールで1回言っただけでは、C/Oは浸透しません。現場のみなさんは忙しいですから。とにかく、何度もC/Oについて伝えていきましょう。

    経営戦略も、事業戦略もある中で、その下ではなくど真ん中のつもりで「C/O戦略」を話していってください。C/Oは、企業経営の話であり、経営の一部なのです。

    コンソーシアムでは、今後も議論を重ねていき、各分科会の研究成果は、2024年3月に「はたらく未来白書2024」として公開する予定です。

    構成:伊藤 ナナ・杉本 友美(PAX)
    企画:伊藤 剛(キャリアオーナーシップ リビングラボ)
    グラフィックレコーディング:松田 海(ビズスクリブル株式会社)

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