キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第2期)

前編:研究会活動のオンライン報告会 詳細レポート

2023.04.28

研究会

2023年3月23日、1年を通して開催された「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第2期」の研究会を締めくくるオンライン報告会が開催されました。23社が集まった第2期の研究会活動では、キャリアオーナーシップ経営を実現するため6つの課題テーマを設定し、分科会ごとに知見を共有・議論を行い、その内容を「はたらく未来白書2023」としてまとめました。このイベントでは、白書の公開を記念し、コンソーシアム顧問の田中 研之輔先生(タナケン先生)によるファシリテーションの下、各分科会の発表とクロストークが行われました。今回は、その様子を詳細にレポートします。


 

INDEX

    コンソーシアム顧問の田中 研之輔先生(タナケン先生)による
    キーノート

    司会:
    こんにちは。今回の「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第2期」ですが、第1期からグレードアップし23社にご参画いただいています。こちらのスライドにもありますが、キャリアオーナーシップ経営を導入、実践していくにあたって見つかった課題を6つのテーマに分け、各企業さんに分科会に入っていただきながら見て、整理し、実践してきた内容を1年間かけて精査してきました。今回はその成果発表の時間となります。それではタナケン先生、お願いいたします。

    田中研之輔氏(以下、タナケン先生):
    昨年度の成果活動報告会から1年。昨年度第1期の参画企業は8社でして、今年はさらにたくさんの企業、23社が参加されていますね。

    司会:
    そうですね。もう本当に集大成の気持ちです。

    今日は申し込みが400人近く来ていまして、非常に着目されていると改めて思います。今日のアジェンダですが、まずはキーノートとして、タナケン先生の方からお話いただき、そしてコンソーシアムが今後の展開における構想部分もお伝えします。

    そして3つ目、各部の分科会からいろいろ見えてきたものがありますから、クロストークのお時間を1時間ほど取っております。

    そしてこのクロストークの中でも使いますが、みなさんが1年間で見えてきた成果を「白書」形式でまとめています。今日ご紹介できるのは白書の全てではなく、一部になると思っております。そこで参加された皆様には白書を先行ダウンロードしていただいて、しっかり読んでいただけるような読み物にしております。ぜひ最後までみなさんお付き合いいただけたらと思います。

    そうしましたら、早速ですけれども先生、お願いできればと思います。

    タナケン先生:
    通常は月1回、大体火曜日を設定させていただいて、4時から6時。月1回のセッションで、23社から数名の方が入られていました。我々の今回の第2期のコンソーシアムは毎回おそらく60名から70名ぐらいの方々が参加されて、各社の課題と取り組みをやってまいりました。

    私はそのアドバイザーをしています。私はキャリア開発を専門としており、法政大学のキャリアデザイン学部で今15年目の教員をやりながら企業さんとご一緒させていただいています。

    すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、キャリアについて「プロティアン」や「キャリア・ワークアウト」といった書籍を出しています。

    コンソーシアムで得た3つの意義と5つの成果

    タナケン先生:
    続いて、このコンソーシアムでこれまで何をやってきたか話をさせてください。メッセージは本当にシンプルで、我々がなぜ集まっているかというと、「キャリアオーナーシップで、社会を動かす」ためです。この共通認識を抱いてみんなで取り組んでまいりました。

    今年、第2期の活動報告会を出発点として、みなさんと共有したいのが、キャリアオーナーシップ経営「3つの意義と5つの成果」です。

    「3つの意義」に関しては、このコンソーシアムの取り組みの社会的意義について考えてみみたものです。一つ目の意義は、コーポレートガバナンスに「個人の幸福」を組み入れる視点です。コーポレートガバナンスを「企業の統治」と訳すとちょっと強すぎますが、より良い企業に向けて、仕組みや仕掛けを作っていく取り組みです。そのときに我々個人がそういった取り組みから取りこぼされては、良くないと。

    今、みなさんもよくご存じの伊藤先生たちが取り組まれている素晴らしい活動、人的資本投資が経営にとって最大の投資先になろうとしている今、一人ひとりの「はたらく」をより主体的にして、幸福度の高さと、生産性・競争力を高めていくことは両輪であることを、みなさんと改めて認識したいです。この取り組みが、ガバナンスに強い今の働き方を担っていく。これからのガバナンスコードと、キャリアオーナーシップ、我々一人ひとりがキャリアのオーナーになって主体的に働いていきます。これは私の言葉で言うと、サブジェクト視点の意義があると思っています。幸福度と生産性は二項対立ではなく、両方必要だと認識していただければ。これが1点目です。

    続いて2点目。「人への投資」と言われていますが具体的施策は一体何なのか? という問題があります。この問題に関して、今回我々が6つの分科会からアプローチしてきたことが、1つの解決策、あるいはブレークスルーのポイントになってくるのではと思っています。

    整理するならば、通常、人事に関わる人々、すなわちCHRO(最高人事責任者)、コンソーシアムに参画していただいている方、今日お越しいただいている人事関係者の方、キャリア開発部の方、経営層の方が「やりたいこと・やるべきことは何か?」というと、経営部門と、人事をうまく有機的に戦略的に連携していくことです。

    これができている企業さんも、もちろんあります。ただ、分けてみると経営がトップにあり、意思伝達のサブユニットとして人事部局がある形で理解されていましたが、もっと真横に意思伝達の早いところで、経営戦略と同じように人事戦略を考えなければならないと言われるようになってきました。

    そのためにいくつかのフィールドでは問題がありますが、それを一つずつ解決していくためには方向性を示した方がいいということで、キャリアオーナーシップ経営が心臓部として動いています。経営と人事が戦略的に連携する起点として、キャリアオーナーシップ経営があることになります。

    3点目の意義は、「組織内キャリアから、主体的なキャリアへの変容」です。もう少しわかりやすく捉えると、組織の中に終身雇用で変わらないで働き続けている時代から、もっと一人ひとりが躍動して、主体的なキャリア形成を全うしていく時代に変わってきています。このある種トランスフォーメーション(変容)の過程を何かで動かしていかなければいけません。一つの花火で終わったら困るので、これで終わらない、このまま続けていくところにも意義がある。継続的なサスティナブルなアクションであること、持続的な取り組みであることに意義があります。

    続いて、このコンソーシアム活動の5つの成果を見ていきます。1つ目は、23社集まった企業さんがキャリアオーナーシップに関してどんな問題を抱えていて、その問題に関してどんなアクションをしていて、どのような現在地にいるのかといったリアルをみなさんに読んでいただけるようにホームページに公開しています。お好きな企業さんでもいいし、ぜひ今日ご参加いただいた方には、できれば全企業さんの動きを見ていただきたいなと思っています。もちろん、参加企業の社員の方々も今日たくさんご参加されていますので、ご自身の企業さんがどんな取り組みをしているのか覗いていただいて。最先端の取り組みについて見ていただければと思います。

    そして成果の2番目は、「キャリアオーナーシップ経営」という概念です。「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」のスピンアウトモデルとして、持続的な仕組みにしたいと考え、構造化に挑戦しています。なぜならば、コンソーシアムはキャリアオーナーシップが社会を動かす仕組みをつくることだからです。

    そのようなわけで、「キャリアオーナーシップ経営アワード 2023」を立ち上げました。実は、第1期のエントリーは終わり審査会の途中まで進んでいますので、今から第1期のエントリーをしてくださいという話ではなく、表彰式等の行方を見ていただければと思います。

    そして成果の3番目もコンソーシアムのホームページに上がっています。分科会の取り組みとして「キャリアオーナーシップの経営診断ベータ版」が公開されています。

    ベータ版なのでまだブラッシュアップの途中ですが、設問シートとカルテがPDFやパワーポイントでもダウンロードできるようになっています。いわゆるオープンイノベーション方式ですから、オープンリソースとして使っていただきたいと思っています。成果の3番目として、今日お届けしますので、またコンソーシアムのホームページからダウンロードして使っていただければと思います。

    次に、成果の4番目は、キャリアオーナーシップコンソーシアムである分科会方式での活動報告です。詳細に関しては本日の後半で、各分科会の代表者が発表してくださいます。その分科会で挙がった6つの課題について「課題がどこから紡ぎ出されてきたのか?」も、重要だと考えています。

    今回挙がった6つの課題は、私や事務局がこちらの課題文を用意したわけではありません。集まってくださった参加企業の方々が、どんな問題を抱えているか企業の現場の状況を共有して、6つの分科会になりました。

    たとえば「人事と他組織の接続って、どんな問題を抱えている?」「ケイパビリティやマネジメントってこれまでの管理職やり方でいいの、悪いの?」といった問題に関して、分科会では取り組んできました。一番上にある診断可視化に関して、経営診断もそうですし、いくつかの診断なども引き続き検討開発に取り組んでいます。これが4番目の成果です。

    4番目の成果は分科会の話なので、いまご視聴いただいているみなさんの関心どころかと思います。どんな問題があるのか、一部を紹介します。たとえば、ファーストキャリア形成期について、私はある企業さんとの経営会議で、同じような課題についてチームのみなさんと話していました。

    課題とは「若手層の問題」です。入社10年目以内ぐらいの社員は「この会社で自分のパフォーマンスを発揮できるの? できないの?」と悩んでいる。これは構造的な問題です。組織はここから3年から5年の間、どのようなキャリア形成ができるのか見せてあげなければならない。でも「それをどうやって?」という話があります。こういった問題に取り組んでいます。

    もう少し私寄りの世代、たとえばミドルシニア層になると、今度は組織に依存します。その組織の中でしか活躍できない、あるいは「その組織の中で活躍しておけばいい」というようなマインドが生まれます。でも人生100年時代と言われていますから、たとえば50歳にしても若いわけです。もっともっと活躍してもらわなきゃいけない中で、これまでの働き方では、制度疲労が起きていると。

    そこに必要なのが「キャリアオーナーシップ」であると考えています。大きな見取り図としては、これまでの組織内キャリア型から、オーナーシップ型へとキャリア形成の転換を迫られている。

    個人の主体的なキャリア形成を応援するラストワンマイルとして、1対1のセッションがあります。インフォーマルなコミュニケーションでの声かけなので、人的資本の最大化の話の中のアクションとして、取り組んできたことです。

    成果の5つ目は、「はたらく未来白書 2023」です。本日完成しました。2022年度版をダウンロードしていただいた方に表紙を見比べていただいきたいのですが、私、この表紙がすごく好きなんです。2022年度版と2023年度版を並べ替えると何かみなさんにメッセージが届くんじゃないかと思っています。

    本日からダウンロード可能となりますので、後半の分科会セッションの活動報告を聞きながら、2023年度版の白書を読んでください。本当にこれだけの活動報告が、バージョンアップした形で手に取れる機会はないと思います。今日ご参加いただいた方はぜひ入手していただきたいですね。

    コンソーシアム発起人から「6Cモデル」の紹介

    司会:
    続きまして本コンソーシアムの活動と今後の構想について、発起人の一人である村澤よりコメントさせていただければと思っております。

    村澤:
    簡単にコンソーシアムでこれまでやってきたことと、今後3期に向けた構想を簡単にお話できればと思います。

    3年ほど前から、タナケン先生と一緒にこのコンソーシアムを考えてきました。いわゆる日本型経営や、画一的、標準的な雇用関係は限界があると言われながら、私達としても日本の企業・個人・社会が変わるきっかけを作りたいと思いながら、2、3年前にコンソーシアムを始めました。

    第1期は去年、8社で始めまして、その中で大きく事業戦略と人材戦略を繋ぐ実践論で体系化しました。第2期の詳細はこの後、参加企業のみなさまから話していただきますが、より実践に近いところで具体的な課題解決を模索してきました。

    今回23社、全部で75万人以上の社員・職員がいます。日本の働く人で言うと大体6,000~7,000万人弱いますので、参加しているのは1%ぐらいです。微々たる数ですが、身近なところで数十万人、数百万人の方がキャリアオーナーシップを持って働き、個人が変わり、その企業組織が変われば徐々に波及して、日本経済自身が良くなるのではないかと思いながら活動してきました。

    先ほどと重なる部分もあるので割愛しますが、成果の一つがこの「はたらく未来白書2023」です。もう一つは相互副業ですが、コンソーシアムでは、いわゆるお勉強的なところで終わらない、実際のアクションに繋げたいと思っていました。その一つ目が相互副業で、参加企業の皆様でお互いポジションを用意しながら雇用し、その前後でキャリアオーナーシップに変化があったか、組織においても新しい発見があったかを実証実験します。

    2期目は、実際に40案件近く相互副業をやっています。それ以外に新しいプロジェクトで「ゆるカチ越境体験」が自発的に生まれました。

    「越境体験」という言葉はみなさんよく聞くかと思いますが、「ゆるカチ越境体験」はカジュアルに参加できる越境体験のようなものです。たとえば相互の社員で、お互いにメンタリングするだとか、相互に各社で持つラーニングをお互い経験する実践も活動の一つとしてやってきました。

    キャリアオーナーシップ経営を実践するにあたって、「見える・増やす・つなぐ」ことが大事だと考えています。「見える」は、自分たちの会社の中でキャリアオーナーシップを持った人材がどれだけいるかところを可視化する。人だけじゃなく、キャリアオーナーシップ経営がどれだけ各社の事業貢献に繋がっているかを可視化するのです。

    2つ目の「増やす」は、文字通りキャリアオーナーシップ人材をいかに育むのか、1人でも多く増やすのかについて。そして「つなぐ」は、キャリアオーナーシップ人材を増やすだけではなくて、人材を会社の経営戦略や事業戦略に紐付けることによって、しっかりと企業の中長期的な活動に繋げる。この「見える・増やす・繋ぐ」の3つで、キャリアオーナーシップ経営が推進されるとわかりました。

    続いて、第2期(2022年度)は23社・団体の方々と一緒に、6つの課題テーマを深堀りしてきました。あくまで現時点での仮説ですが、我々は、企業・組織が起こすべき6つの変化があると思っていて、これを「6Cモデル」と名付けました。

    <キャリアオーナーシップの6Cモデル>

    • Contribution 人と組織の新しい可能性を作ろう
    • Connect はたらくを、もっとオープンに
    • Culture 多様なはたらくを受容する風土に
    • Capability 人事のOSをアップデートしよう
    • Challenge 枠を超え、変化を生み出そう
    • Cheer Up 一人一人の可能性を引き出そう

    ここからは、3期に向けた簡単なアナウンスです。今まで業種を問わず、キャリアオーナーシップ経営をどうするかという観点で活動していましたが、実際は業種やビジネスモデルによって変わると思います。
    先ほど3つの視点と6つの変化をお伝えしましたが、さらに、個社ごとに実践の中でカスタマイズさせて進化・加速させていこうとしています。さらに、実践的なナレッジを増やし、発信していきたいと思っています。各社だけで閉じるともったいない。より他の活動ともつなげたい思いです。

    「キャリアオーナーシップ経営」を考えたときに、場合によってはコンソーシアム参加企業にのみならず外部ともさらに広げながら、営業単位の幅と深さを広げ、世の中全体のキャリアオーナーシップ経営のモメンタムを少しでも生み出せればと考えています。今後何らかの形で第3期以降のコンソーシアムの活動を案内したいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

    司会:
    どうもありがとうございます。ここからの大きなモメンタムを作っていくところで、ぜひ聞いていただいているみなさん含めたくさんの方々に事例を持ち込んでいただきながら、進化していければと思っています。第3期以降のコンソーシアムに参加されたい方は、ぜひお試しいただけたらと思っております。

    分科会発表①:企業文化の醸成・適合

    司会:
    それではクロストークに入っていきたいと思います。先ほどお話にもあります「はたらく未来白書 2023」の分科会で、どういったことをやってきたのか、「チラ見せ」する形でお伝えできればなと思っています。

    前半では3つの分科会の方々に発表いただきます。後半はタナケン先生にも参画いただきながら、会話していく時間にしていきたいと思っています。

    まずは1つ目の分科会「企業文化の醸成適合」がテーマです。パナソニックコネクトの渡邊さん、お願いいたします。

    渡邊:
    第3分科会で参画しました、パナソニックコネクトの渡邊と申します。会社内では人材組織開発部でキャリア開発を担当しております。まずはタナケン先生それから村澤さん。また事務局のみなさんに、多くのご尽力をいただきましてありがとうございました。改めて感謝申し上げたいと思います。

    私たち第3分科会では、「企業文化の醸成と適合」タイトルで取り組みをしました。誰もが自らのキャリアをオープンに語られる企業文化を目指して進めました。

    ただ、そもそも「企業文化」「醸成」「適合」という言葉の定義が、分科会の中でも共通言語化しないと話は進みません。企業文化と一口に言っても100社100様なので、キャリアオーナーシップを進めていく上で、ベースとなる「企業文化って何なんだろう」をまず考えることにしました。

    「醸成」と「適合」では、キャリアオーナーシップ企業文化ができ上がった状態はどういう状態なのかをまず考えることとし、それを目指すための手段を「適合」と読み替えました。そして、ベースとなる企業文化を、オーナーシップが企業文化として根付いた状態、そしてそれを目指すための打ち手の考え方を進めていきました。

    次に「どういう状態が、キャリアオーナーシップが達成された状態と言えるのか」経営層・従業員層・マネジメント層で整理しました。これらを分科会の5社で検討したところ、それぞれ会社の状況が異なりました。自社に置き換えると、議論が堂々巡りをし、発散と収束を繰り返すことで考えを巡らせながら、何とか最大公約数的にまとめたのが実態ではないかと思います。

    キャリアオーナーシップに絶対的な方法はないと思いますが、自社はどうなのか、他社と比較してどうなのかという視点を持った上で、「はたらく未来白書 2023」を参考にしていただきながら、進むべき道を模索していただければ嬉しいです。考え方のヒントとして、アイディアをロードマップとして表現しています。

    こういった議論を毎週木曜日の昼休みに、オンライン上で実施しました。分科会はエーザイさん、三井情報さん、花王カスタマーマーケティングさん、中外製薬さん、弊社の5社で、積極的に議論を交わすことができました。

    ジリツに関して「自立」と「自律」をうまく使い分けた方がいいという課題提起をしています。ぜひみなさんにも参考にしていただければと思います。

    最後に、タナケン先生から「企業文化の醸成と適合は入り口であり重要だ」と言っていただいたことがチーム全員の骨身にしみておりまして、プレッシャーを感じながらも議論したのが最大の楽しい思い出です。叱咤激励をいただきありがとうございました。

    司会:
    渡邊さん、発表どうもありがとうございました。渡邊さんは通常はリモートワークで九州にいらっしゃるのですが、今回のコンソーシアムの活動でみなさんとリアルで話し合うタイミングとして東京にもいらっしゃるなど、非常にアクティブにご参加いただきました。ありがとうございます。

    「はたらく未来白書 2023」の中で、各フェーズでどういった打ち手があるのかをまとめていただいています。そこも今回参画いただいた企業さんそれぞれのフェーズがある中、非常に参考になると思いながら見ておりました。

    分科会発表②:キャリアオーナーシップ人材やキャリアオーナーシップ経営の診断・可視化

    司会:
    続いてキャリアオーナーシップ経営を会社の中で浸透させていくとき、組織の上にも下にも説明していく必要性が出てきます。そういったとき、どのように形式化あるいは定量化していくのか、診断や、可視化するアプローチが非常に重要というお話が出てきました。こちらのテーマについて発表していただくのは、ヤフーの張さんです。

    張:
    ヤフーの張と申します。参画企業様を代表し、キャリアオーナーシップ経営の分科会の白書についてご紹介させていただければと思います。

    ※C/O=キャリアオーナーシップ

    本分科会は各社様のキャリアオーナーシップ経営状況について、「社員一人ひとりがどの程度のキャリアオーナーシップを持っているのか」と「支援する土壌がどのぐらい整っているのか」について、個人と組織、2つの軸について定量的に可視化・スコア化の実現を目指し活動してきました。

    弊社としては、社員一人ひとりの主体的な成長が経営に資するものである考えのもと、主体性を高める人事の仕組み作りへ、日々挑戦をしています。各施策を展開していく中で、果たして「社員のキャリアオーナーシップに変化が起きているのか?」。それ以前に「現状、キャリアオーナーシップが高いのか低いのか」について、なかなか定量的に示す指標自体が存在していませんでした。

    そもそもキャリアオーナーシップを支援する施策の方向性や、施策の効果を確認することが、定量指標がない状態で難しいという課題もありました。そこでぜひ定量化に挑戦していきたいという思いから、分科会に参画しています。

    具体的な分科会のアクションとしては、まずキャリアオーナーシップ経営スコアをさまざまな項目を用いて定義しました。最終的には計20問弱の設問に落として、実際に社員を対象にサーベイを行うことによって、スコア化を図りました。

    定量的に可視化されたスコアについて単体で何かを語るのは難しいので、その他の既に定量化されている人事指標、たとえばパフォーマンス、エンゲージメント、社員の属性(職位・入社区分)と掛け合わせていくことによって、キャリアオーナーシップが個人や組織にどうインパクトしていくのかという観点で調査を進めていきました。

    弊社の事例を少しご紹介します。本サーベイについては全従業員を対象に実施しまして、最終的には9割以上の回答率を得て分析を進めてきました。「はたらく未来白書 2023」でまとめていますが、キャリアオーナーシップスコアと職位に比例的な関連性が見られたり、あとは従業員のエンゲージメントやパフォーマンスとも、同様の関連性が見られたりすることが、分析結果からわかっております。

    今回このスコア化と分析の結果が何かすごく新しい発見に繋がったというよりは、今まで定性的、感覚的にイメージしていたキャリアオーナーシップの高さが組織・会社に良いインパクトを与えているであろうことが明確にデータとして示すことができました。今後、データドリブンでいろいろな人事施策を動かしていくところに対して、非常に大きな一歩を踏み出せたと思っています。

    詳細の設問や結果については、「はたらく未来白書 2023」にまとめておりますので、ぜひご覧いただければと思います。

    司会:
    張さん、どうもありがとうございます。ヤフーさんは定量化を常にやっていらっしゃる企業だからこそ調査も9割の回答率と高く、データを可視化できたのだと思いながら見ておりました。「キャリアオーナーシップにどんな意味があるのか」という問いに、回答をちゃんと示せるかどうか大変だったと思いますが、一つのソリューションを提示してくださったと思います。どうもありがとうございます。

    分科会報告③:人事と他組織の接続

    司会:
    キャリアオーナーシップ経営において、人事だけではなく他組織との接続が重要であるということについて、内閣人事局の長野さん、お願いいたします。

    長野:
    第1分科会の長野です。私たちのテーマは「人事と組織の接続」です。構成メンバーは、ゆうちょ銀行さん、LINEさん、パーソルキャリアさん、そして私の所属する内閣人事局です。

    私から簡単に「はたらく未来白書 2023」をチラ見せする形で、第1分科会のお話をさせていただきます。第1分科会では、「キャリアオーナーシップ経営を押し上げるためには、人事はどのような役割であるべきか」について、他組織との接続へ重点を置きました。その他組織は集合体というより、むしろそのキーパーソンと解釈していただいた方が、わかりやすいかもしれません。

    我々の中でキーパーソンは、施策を推進するにあたって了解を得るための経営層、あるいは施策を具体的に全社組織に浸透させる部門長です。そして現場の管理職、さらにその現場のメンバーたちという、さまざまな構成メンバーがいた中で人事はどのように接続・連携していくかを、分科会として考えました。

    まず人事として、キャリアオーナーシップ経営なるものを推進するためにはどうしたらいいんだろうかと。どのような考え方で、まず誰を巻き込んで、どのような政策を優先的に打てばいいのか。これから取り組む組織の方、人事のためにはガイドライン的なものとして活用していただきたいと思っております。すでに取り組んでいらっしゃる組織にあたっても、自分たちの取り組みを一度客観視していただけると考えています。現在自分たちがやっている取り組みが果たして合っているか、振り返り素材にも使っていただきたいと思い作成いたしました。

    各組織に置かれている現状によって、何に取り組むかは大きく異なると思っております。そこでいろんな切り口で分類することも可能ですが、我々はその前期の白書で先人たちが「3つの浸透アプローチ」を作っていらっしゃっていますので、それにならって我々もこの3つのアプローチから考えてみました。

    まず、キャリアオーナーシップ経営を人事主導で行うか、トップの主導で行うか、あるいはその両方が一体となって行うか。この3類型に分けられるのではないでしょうか。それぞれ3類型で、自分の組織はどこなんだろうと考えていただきます。さらに人事主導ならば、まず経営層にキャリアオーナーシップ経営なるものを、理解していただかなければなりません。

    それでは、どのようなことをやったらいいのか? というところで、具体にその経営層におけるアプローチの仕方を、たとえば経営層が全くキャリアオーナーシップを知らない場合と、知っているけれども取り組んでいない場合に分けました。その中でさらに4分類にし、それぞれにどうアプローチできるかをまとめました。具体的に知りたい方は、ぜひ「はたらく未来白書 2023」のダウンロードをお願いしたいと思います。

    司会:
    ありがとうございます。長野さんはキーマンとして非常に有名な方で、フラットに、いろいろと動いていただいていました。

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