キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第2期)

第7回 はたらく未来白書2023の発表に向けて

2023.02.21

研究会

2023年1月17日、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第2期」の第7回研究会が開催されました。第7回は、発足した6つの研究分科会の発表のうち、第6分科会「キャリアオーナーシップ人材やキャリアオーナーシップ経営の診断・可視化」が発表を行いました。チームの発表を受けて意見交換が行われ、顧問の田中 研之輔先生(タナケン先生)のフィードバックをいただきました。
 
また、発表の後には「はたらく未来白書2023」の構成案が共有され、チームごとに構成案の議論を深めました。こちらの記事では、第7回研究会でどんな議論が行われたかご紹介します。

INDEX

    第6分科会 キャリアオーナーシップの診断・可視化

    私たちのグループでは、キャリアオーナーシップを可視化するためのデータ作成に努めてまいりました。まずはキャリアオーナーシップを「個人のキャリアオーナーシップの強さ」と「キャリアオーナーシップを発揮できる組織」の2つに分け、合計8つの項目に分類して指標制作を進めました。

    現在はご協力いただいた企業様から集めたデータをもとに、分析している段階です。

    全体的には、以下8項目について5段階でキャリアオーナーシップを査定しました。

    個人のキャリアオーナーシップの強さ

    1. 自己把握
    2. 中長期ビジョン
    3. 主体性
    4. 環境変化への対応力

    キャリアオーナーシップを発揮できる環境・組織

    1. 成長機会の提供
    2. 柔軟な働き方ができる環境
    3. オープンでフラットな企業風土づくり
    4. 成果に応じた適切な評価・報酬

    (速報)A社の調査結果

    A社における回答者数は6,261名、回答率91%と、大多数の社員に参加していただけました。主な項目は他社さんで実施した設問と同じですが、具体設問を自社に合わせカスタマイズしています。

    調査結果の要旨として、これらの特徴が見られました。

    • 役職別:役職の高さとキャリアオーナーシップの高さは比例
    • 入社区分:中途入社組のほうがキャリアオーナーシップも高い
    • エンゲージメント:エンゲージメントの高さとキャリアオーナーシップの高さが比例
    • パフォーマンス:パフォーマンスの高さとキャリアオーナーシップの高さが比例

    (速報)B社の調査結果

    B社の回答者約2,000人(回答率4割)からの調査をもとに、速報結果をご報告します。

    キャリアオーナーシップを部署別に診断した結果、大きな差分が見られました。部署をおおまかにフロント・ミドル・バックオフィスに分けたとき、以下のような傾向が表れてきました。

    • ミドルオフィスの部署が先進的にキャリアオーナーシップを進められている
    • バックオフィスはキャリアオーナーシップにおいて、やや遅れを取りやすい
    • 新規事業の分野ではキャリアオーナーシップが育ちやすい

    また、A社と同様に、職位別、エンゲージメントでも相関が見られました。

    • 役職別:役職の高さとキャリアオーナーシップの高さは比例
    • エンゲージメント:エンゲージメントの高さとキャリアオーナーシップの高さが比例

    タナケン先生のフィードバック

    調査ありがとうございます。「自己把握」について、A社、B社の両方で低いスコアが出ていることや、他のスコアと関連性が見られなかったことが気になっています。まずはそこから見られる示唆について、教えていただけますでしょうか。

    ――はい。キャリアオーナーシップには、自身が強いビジョンを持つことよりも、自己理解を深めていくプロセスを踏むことが大切なのかもしれない、という仮説を立てています。

    面白いですね。今回の調査データから、加重平均スコアを見てみると、「調査のタイミングから強固な自分の軸を持っていることよりも、組織変化に対応できることがキャリアオーナーシップにおいては重要である」という示唆が見られますね。企業組織の変化に適合できれば、キャリアオーナーシップは育っていく可能性があると。これは非常に示唆深いですね。

    調査手法の改善策として私からご提案したいのは、設問のブラッシュアップです。現状、どのスコアも3.5~3.8の間を推移しています。現時点であまりにスコアが高いと「キャリアオーナーシップの伸びしろがない」とみなされてしまう恐れもあります。私たちは単にキャリアオーナーシップの満足度を見たいのではなく、今後施策を打った上でのスコア上昇を目指したいわけですよね。そのため、設問を変化させる必要性はあると思います。

    たとえば「環境への対応力」を問いかける場合、質問文が「新しいスキルを磨くために努力していますか」なら多くの人が「はい」と答えるでしょう。しかし、これが「毎週1時間程度、スキルアップのために具体的な努力をしていますか」に変われば、スコアは下がるのではないでしょうか。

    こういった改善を通じて、他社比較や個社における改善策を経年でやっていければと思います。そうすれば、人事施策が変化する中で、何が影響したのかを分析可能になるのかなと。

    他チームからのコメント

    「ご説明ありがとうございました。弊社内のエンゲージメント・サーベイ分析でも、社員エンゲージメントへの影響度のトップ3に「自社におけるキャリア目標の達成見込み」が入っており、それを裏付ける結果としても大変参考になりました」

    「タナケン先生がおっしゃるとおり、全項目3.5~4.0の間を行き来しているように見られます。3.5と3.8でそこまで優位な差があるのか、設問設計として最適なのか? 5段階で設問を設定することに意義があるのか? といった部分は見直しが必要なのではないかと思われます。
    今後、このデータをもって何をしていけばいいのか。たとえば他社比較をして自社内に応用していくことはできると思いますが、自社内のPDCAとして何をすればいいのか、という点においてご意見を伺いたいです」

    ――ありがとうございます。組織のキャリアオーナーシップについてはそれぞれの設問同士に強い相関が見られたため、設問をマージすることで、18個に及ぶ大量の質問に回答するコストを下げられるかと思います。

    さらに、個人のキャリアオーナーシップでいくと、各施策を実施する際、サポートするデータにはなると思っています。たとえば、個人のキャリアオーナーシップで「主体性」という項目を育てるとしたら、「エンゲージメント・スコアと主体性はこう相関しています」といったデータを出すことで、施策の意義を見せることはできると思います。

    また、個社分析においては、著しくスコアが低い部署を洗い出すことも可能になってくると思います。細かな分析を加えることで、自社内の課題を深掘りできる可能性は高いのではないでしょうか。もちろん、今後さらにデータ分析の手法をブラッシュアップしていければと思います。

    今後、さらに分析をすすめ指標のアップデートを行っていきます。
    その一部は、3月に公開予定です。

    企画編集:伊藤 剛(事務局 広報・啓発 責任者/キャリアオーナーシップ・リビングラボ責任者)
    構成・ライター:伊藤 ナナ(PAX株式会社)、杉本 友美(ライティングファーム紡)
    グラフィックレコーディング:松田 海(株式会社グラフィックレコーディング)

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