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キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第2期)

第5回 後編:各分科会の経過発表とチームを超えたディスカッション

2022.12.20

研究会

2022年11月15日、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 第2期」の第5回研究会が開催されました。第5回は、発足した6つの研究分科会のうち、後半3チームが重点的に経過発表を行いました。2022年12月20日(火)の全体発表に向け、他の分科会に参加している企業やコンソーシアム顧問の田中 研之輔先生(タナケン先生)を交え意見交換を行いました。
 
こちらの記事では、第5回 研究会でどんな議論が行われたか、各分科会の発表と田中先生からのコメントを中心にご紹介します。

INDEX

    第4分科会 マネジメント層の役割と育成

    前回の研究会では、他チームへ情報提供を行いました。その後、分科会の開催はなかったため、大きな進捗はない状況です。ただしその間、各社で抱えている「マネジメント層の役割と育成」に関する課題を持ち寄りました。2022年11月17日の会議で打ち合わせ予定のため、今回は各社様のヒアリングを中心に進めていきたいと思います。

    課題を持ち寄る際に、管理職の役割・必要なスキル・必要な支援策について考えました。

    1)管理職の役割

    “管理職”の概念は古いのではないか、という問題提起がこれまでになされています。そこで、マネージャーの役割は「管理職から○○職へ」と言える、新しいキーワードを出したい考えです。

    2)管理職に必要なスキル

    続いて、管理職に必要なスキルをリストアップしています。特に、マネジメントスキル・キャリアリテラシーの2点から項目を挙げていく見込みです。

    リストアップですが、今回はキャリア支援に直結する部分に絞り「キャリア開発、人やチームの維持」に注力します。

    3)管理職に必要な支援策

    最後に、どのような支援策が新しい管理職には求められるかを考えていく予定です。特に、キャリア面談(1on1)を簡単に実施するための支援ツールが必要だと考えています。
    というのも、1on1を実施せよと伝えただけでは、部下と何を話していいか戸惑ってしまう管理職も少なくないからです。具体的なステップを示すだけでよいのか、それとも30分程度の逐語が必要かは考え中です。また、ケースごとの支援例が必要ではないかとの意見も出ています。

    そのうえで、本日皆様にお伺いしたいことが3つあります。

    1. マネジメントが部下にキャリア支援するうえでの具体的な研修内容
      対象者、プログラム、時間・頻度、重視している獲得スキル
    2. キャリア1on1を行うための支援ツールで具体的にどのようなものが他社で用意されているか
    3. トークスクリプト(逐語)は若手社員、中堅社員、管理職、シニア社員などでどのようなものが欲しいか

    タナケン先生のコメント

    まさに、おっしゃる通り。もう「管理職」と表現すべき時代ではないですよね。人的資本元年と言われている時代において、管理職の仕事とは単に勤怠を追いかけることですか?と、問いかけるフェーズがきています。

    管理職は本来、人的資本の最大化をしなくてはならないはずです。そして、こういった管理職のスキルは後天的に取得可能ですから、オンライン教材などの支援ツールを準備していくのは、非常に大切かと思います。

    ただ、管理職だからといって、部下全員に1on1を強いるのは業務負荷が大きすぎるのではないでしょうか。そのため、1on"n"の制度が必要ではないかと思います。ときに3人、ときに何人ものセッションを組む可能性を考えたい。キャリアパフォーマンスが悪い方には1on1、キャリアに可能性がある方には座談会の仕組みを作る。そのようにできれば理想的かと思います。

    また、専門家によるキャリア相談と、業務を回すときのマネジメント層による面談では差があってしかるべきです。仕事のパフォーマンスを上げるために、キャリアを考えてほしいと伝えることが、マネジメント層ならできるはずです。

    キャリアコンサルタントのように、傾聴までできるようになる必要はありません。マネジメント層がキャリア面談と評価者面談をやっていると、関係性がねじれていきますよね。直接的な表現をすると評価者の側面が強く出てしまうため、オブラートに包んだキャリア相談をしていくようになります。ですが、業務と切り離されたキャリア面談は、マネジメント層には必要ありません。業務と離れた内容を含むキャリア面談は、上長以外の人を置く仕組みも設置して良いかと思います。

    ――弊社では実際に1on1を実施し、想定以上に反発は少ない印象です。1on1を通じて必要な声が聞けたとの声が大きいです。タナケン先生としては、1on"n"についてはどのようなイメージでしょうか。

    たとえば、研修で小分けにして、5名グループを作るイメージです。グループ分けした面談について「業務以外のことだからムダですよね、ロスですよね」という考えではなく、人が伸びれば事業が伸びるという考え方をしていきたいですね。優れたマネージャーを追跡して、その方のやり方をまねていくと良いのではないでしょうか。

    他の分科会メンバーとのやりとり

    「弊社ではリーダー向けに2022年より「キャリア支援力強化セミナー」を始めました。評価者としての面談はできるが、キャリア面談は苦手というリーダーが多かったためです。WILL(やりたいこと)起点のメンバーが現在の仕事に向き合わず「**の部署に行きたい」と言うだけの面談にならないように、価値観やありたい姿に対し、仕事を通じてどう近づけていくかというような内容です」

    「1on"n"で実施する場合は、その組織・集団における横の信頼関係に左右されそうな気がします。"n"で集めたときに、どこまでオープンにできるか懸念が残るなと感じました」

    「参加メンバー間での心理的安全性など、1on“n” が効果的に成立する前提条件のようなものがありそうですね。キャリアオーナーシップの段階がばらついていた方がいいのか、同じレベル感の人をまとめたほうがいいのかなども気になります」

    「弊社でも研修で1on1の実践を取り入れたのですが、実際にやるものと乖離があるケースが見られました。どのようなプログラムが理想的と言えるかは、悩んでいるところです」

    「キャリア面談をしよう、と言っても『何したらいいんだ?』と、双方が感じている面もあるかなと感じています。たとえば、『働き方を話しましょう』くらいの温度感から入ってもよいのではないかと思いました。今どう働きたいか、将来どう働きたいか、は、各自会話も進みそうですし、結果として、キャリアを相談することにつながるのではないでしょうか」

    「キャリア自律支援に精力的に取り組んだ管理職から、『キャリア支援をいくら頑張っても、評価されないからやめました』という声が出てきたことがあります。管理職の評価基準についても変革を同時にやっていかないと、こういう現象を生んでしまうのかもしれません」

    第5分科会 非連続な環境の設定

    今日は、私たちが提案する、「ゆるカチ越境体験」進捗報告をいたします。

    ※ゆるカチ越境体験とは……ゆるい越境とカチっとした越境を組み合わせ、より企業間での人材交流を柔軟にするプロジェクトのこと。

    私たちが目指す「ありたい姿」とは、越境体験の効果が可視化され、企業を超えた越境体験が活発に行われている状態です。2023年3月までに、ゆるカチ越境体験の一部実践が完了し、それぞれの評価&検証ができている状態を目指したいです。そうなると、時間制限から見て「ゆる施策」ばかりを評価&検証することになる可能性がありえます。そこで、少なくとも1つは「カチ施策」を短期間で仕込みたいと考えています。

    現段階で、私たちは施策の設計に入っています。何らかの施策を12月~翌年1月に向けて実施したい考えです。

    これまでに50を超える越境体験案を出し、テキストマイニングしました。そこから抽出されたキーワードを分析し、もう一度案を見直し、カテゴライズしました。

    現在挙がっている施策は7つあります。
    1)社内ベンチャー・プロジェクト参画
    2)企業間の短期留学
    3)企業間交流・意見交換
    4)メンタリング
    5)シニア層向け
    6)休職中のキャリアフォロー
    7)相互副業

    まずはパイロット的に5)シニア層向け施策の具体案を検討中です。それを土台にして、他のグループの施策検討を進めていこうと考えています。その中で、キャリアオーナーシップへの関心が高・中・低の方に参加していただく3パターンのうち、いずれが良いかを話し合いました。

    結論としては、キャリアオーナーシップへの関心が中程度の方にご参加いただくのが良いと考えています。というのも、キャリアオーナーシップがすでに高い方ではゆるカチ越境体験の前後で変化が発生しにいためです。逆に、キャリアオーナーシップへの関心が低すぎると、越境の受け入れ側に負担がかかると考えました。

    今回採用しつつある、シニア層向けの施策はさらに2案を具体化しています。
    1. 越境勤務研修…週1回、3〜4時間の稼働でミニマムな副業体験
    2. 社外メンタリング…企業でキャリア面談を経験された方の派遣

    今後は、効果検証の測定方法を検討しつつ、白書における見せ方を考えていきたいと思います。

    タナケン先生のコメント

    非常に具体的で素晴らしいと思います。そしてご指摘のとおり、今回はミドル・シニア層へ注力したほうが良いですね。

    「今まで仕事を結構頑張ってきたけれども、徐々に負荷が軽くなってきた、けれどもまだまだバリバリ働ける方」へ向けた施策は、キャリアオーナーシップを考えるうえでも刺激になるからです。さらなる発展のために、このゆるカチ越境が無償での社外トレーニングをイメージすべきなのか、それとも副業的な体験なのかを事前に具体化すべきかと思います。

    また、事前に本業の負荷軽減をしないと、せっかくのゆるカチ越境体験が「負荷の高い追加業務」になってしまいます。たとえば、本業を20%軽減して、それができた場合のみ副業に充てるのはいかがでしょうか。あとは、ゆるカチ越境に参加していただく人数を十分に確保したいですね。1社から2人、3人ではなく30から50名の規模で実施していただきたいです。

    ――ありがとうございます。実は、自分たちのチームの中で、弊社は「お見合い」に失敗しました。つまり、他社さんから「いいね」とおっしゃっていただける越境案が出せなかったのです。

    越境を提供する側としても、具体的に何が提供できるかをお知らせしないと、マッチングは発生しません。そのうえで弊社も「お見合い」につなげたいなと思っています。そのうえでアドバイスがあれば、お教えいただけるとありがたいです。

    何か「ゆるカチ越境の中で動かせるプロジェクト」を持てると、マッチング度合いが上がっていきそうですね。これまでの越境体験は、実際に相手先の会社へ出社する必然性がありました。そのため、実施にもなかなか障壁があったと思います。しかし、オンラインでの越境体験なら簡単になりましたよね。今回のコンソーシアムにおける勉強会も、オンラインだからこそ月1回で会える面があると思います。オンラインでのゆるカチ越境を考えていただくと、良いのかもしれません。

    他の分科会メンバーとのやりとり

    ――どこまでこのチームの中だけで実施するのか、それともコンソーシアムへ参加された全企業にご参加いただくのかも考えているところです。

    「シニア層向けの方の場合、業務設計のハードルが上がりそうな気がしています。むしろ手を上げてくれたシニアの方に何ができるかを棚卸ししてもらい、それを業務に繋げていくと良いかもしれませんね」

    「弊社のミドル~シニア層で手をあげて越境体験している者が数名おりますが、越境先で成果を出すという観点では基本的に苦戦しがちです。ただしその分、本人にはとてつもなく刺激があるのだと思います。敷居が低いものから、高いものまで越境体験をそろえる『ゆるカチ』というコンセプトがとても良いと思います」

    「ゆるカチ越境体験がミスマッチだった場合の対策もいくつかあったほうが良いのかなと思いました。せっかく踏み出したのに『やっぱり駄目でした』となるとマイナス面が強くなってしまうなと……」

    さらに、1点質問の声が挙がりました。

    「実際にゆるカチ越境体験を実施したとして、前後における効果の比較検証が難しいのかなと感じています。そこで、さまざまな『ゆるカチ越境体験』を実施して、それからファーストタッチを比較していくのか、それともシニアなどへ絞り込んでやっていくのか、どちらを考えていらっしゃいますでしょうか」

    ――ありがとうございます。これから、その点については検討していきたいです。

    第6分科会 キャリアオーナーシップの診断・可視化

    私たちは「本コンソーシアムを通じて起こしたい変化を、経営陣へ説明できる状態を目指す」ことを目標に、指標を設計していきました。

    具体的には、
    1)個人のキャリアオーナーシップ度合い
    2)キャリアオーナーシップを発揮・育成する組織環境
    これら2点を、スコア化していきたいと思います。

    さらに、指標の分析は3段階に分かれると見ています。

    1. 各社で実施した個別施策の成果を検証する
    2. 各社の傾向を見ながら、自社における不足点を抽出する
    3. 事業指標やアウトカムとの相関を定点観測

    初年度はあくまでも指標体系を作るところで始まり、2年目以降で評価していきたいと思います。

    また、私たちのチーム以外でも議論されている課題と、分析の断面を同期していくことで「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアムらしさ」を出していきたいとも考えています。単純に数値目標を設計して終わり、ではなく、今後どう運用していくかという視点で、他の分科会とも関わっていきたいです。

    なお、社員ごとのパフォーマンス・評価は個人情報に触れるため、コンソーシアムでは触れることができません。そのため、社員個人のパフォーマンスとの相関は、各社で持ち帰ってデータを突き合わせ、発見をしていただければと思います。

    進捗としては、具体設問の調査票が完成しています。今後は、配信の準備に入っていきます。コンソーシアムにご参加いただいている企業にお力をいただき、統計処理可能な一定母数のサンプルは確保できました。ご協力ありがとうございます。ぜひ、ご参加いただく各社から一言いただければ幸いです。

    社員のみなさんの主体性が、パフォーマンス、評価とも相関するものであると期待しています。そのため、社内でキャリアオーナーシップを応援するような仕組みづくりにつながるサーベイにできるよう、指標を作っていきたいと思います。

    タナケン先生のコメント

    良い進捗ですね。おっしゃる通り、今年限りの調査を設計するのではなく、経年で調査を追いかけていきたいですね。来年のコンソーシアムで参画企業さんごとにデータを取っていければ嬉しいです。今回作っていただいた指標をもとに、1年に1度くらいの大規模調査として実施できれば、キャリアオーナーシップとしてもアウトプットとして意味があるかなと。

    また、各社ごとにキャリアオーナーシップの調査が走っているところもあるようですね。可能であれば両方走らせていただければと思います。自社内の分析と比べていただくことも価値があります。

    他の分科会メンバーとのやりとり

    「ゆるカチ越境施策の効果検証でも指標を使っていけるのかどうか、改めて検討したいと思いました」

    今後の流れ

    次回は全チームが発表します。各10分ずつの発表を予定しております。

    企画編集:伊藤 剛(事務局 広報・啓発 責任者/キャリアオーナーシップ・リビングラボ責任者)
    構成・ライター:伊藤 ナナ(PAX株式会社)、杉本 友美(ライティングファーム紡)
    グラフィックレコーディング:松田 海(株式会社グラフィックレコーディング)

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