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キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第1期)

第10回 参画企業の現在地 ヤフー、富士通、LIFULL、パーソルキャリア

2022.03.10

研究会

2022年1月18日、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」の第10回 研究会が開催。第10回 研究会では、第9回に引き続き各社に作成いただいたキャリアカルテを発表いただき、参画企業同士でのディスカッションを実施しました。
第10回では後半として、ヤフー株式会社、富士通株式会社、株式会社LIFULL、パーソルキャリア株式会社の4社のプレゼンテーションが行われました。
 
本記事では、各社の発表内容のグラフィックレコーディングによるまとめと、発表内容の一部をご紹介します。

※こちらのカルテを使用し、各社がキャリアオーナーシップ経営の全体像を整理・発表を行いました。記載内容は研究会の議論を活発にするため非公開となっています。

INDEX

    ヤフー株式会社の発表~社員一人一人が成長を最大化させていけるようなサイクルを回す組織に~

    ヤフーがキャリアオーナーシップに取り組む背景として、AIテックカンパニーとして事業を推進していくうえで、自律的に働ける人材を獲得していくこと自体が経営課題になっているということがあげられます。

    エンジニアなどのAIテック人材の採用競争が激化する中、弊社が人材を獲得していくうえで、キャリアオーナーシップを推進することは前提になると考えています。

    社員一人ひとりの成長を最大化させていけるようなサイクルを回す組織にすることができれば、自ずと有能な人が集まるという考え方の元、社員の成長を最大化させるためにキャリア自律を促しています。

    2012年より、社員一人ひとりの経験や強み、志向性を活かしながらキャリア開発を行っていくという考え方をベースにしており「人財開発企業になる」というトップのコミットメントのもとに施策を推進してきました。

    キャリアオーナーシップ人材の「見える化」については、2つの施策を実施しています。

    1つ目は「人財開発カルテ」です。職務経歴書の簡略版のようなものを社員一人一人に書いてもらっています。

    2つ目は「人財開発会議」です。人財開発カルテへの入力内容をベースに、その人は今後どのような経験をしていくべきかを部門横断で議論して、キャリアの具体化を促しています。

    これらは10年前から行っている施策ですが、一時的に運用を任意にしていた時期もありました。ただ、任意だと人事的な施策は個々人の業務における優先順位が下がりやすいということが見えてきました。

    そのため、昨年11月から、人財開発カルテへの入力を必須としました。リモートワーク中心の働き方に移行する中で、お互いの顔が見えづらくなっています。そういった環境においてもキャリアに関する認識あわせをしっかりと時間をとって行なってもらうために「任意」から「必須」へと戻した形です。

    キャリアオーナーシップ人材を「増やす」施策としては、社内公募、ジョブチェンジ、副業制度、リーダーシッププログラムなどの制度を整えて、実行しています。

    これらの制度を活かすためには、人財開発カルテをベースに上長と認識合わせをして、自分の現在地を理解することが重要になります。このプロセスが、キャリアオーナーシップ人材を増やすうえで非常に大きなアプローチになっています。

    コンソーシアム内でも話題に挙がっていましたが、カルテを書くことによる本人に対するインセンティブやメリットは、なるべく増やしていかなければならないと考えています。上長との1on1や、人財開発会議による周囲からのフィードバックを得られる機会は、カルテを書くメリットの一つとして機能していると考えています。

    「つなぐ施策」としては、前述の「人財開発会議」を介して、次にどのような経験を積むのが良いのかを議論して、本人の意向と今後経験してもらう事とのマッチングを行って人事異動につなげたりしています。

    今後の課題としては、異動に繋げていく仕組みを更に整えていくことです。本人の手あげだけではなく、普段の上長とのコミュニケーションや、カルテの情報を通じて、マッチングがより促される仕組みをつくることが、一番大事なポイントだと考えています。

    カルテを必須化して、エンゲージメント調査のスコアが一部上昇しました。このようなポジティブな変化をしっかりと追いかけていきたいです。

    ただ、エンゲージメントスコアをベンチマークしている他社と比べると、「やりがい」や「キャリア機会の提供」などの、キャリアオーナーシップに直接つながる項目において、平均より下回っている項目もあります。お伝えした施策を推進していくことで、これらのスコアがどのように変化していくかを見ていきたいと考えています。

    富士通株式会社の発表~組織やお客様への貢献を軸にできるキャリアオーナーシップ人材を増やすには~

    会社として事業形態をIT企業からDX企業へと大きくシフトしていることが、キャリアオーナーシップ施策の大きな原動力になっています。人事戦略は数多くある経営戦略の1つで、他の戦略と組み合わせて推進しています。

    DX企業に変化する中で、より自律した働き方が社員に求められ、人事制度もそれに合わせて変化しており、キャリアオーナーシップがより求められている状況です。

    キャリアオーナーシップ人材は「自律と調和ができる人材」と定義しています。ひとりよがりにキャリアをとらえるのではなく、一緒に働く人たちとの繋がりの中で、組織やお客様への貢献が軸となり、自身のキャリアにつながっていくという価値観を重要視しています。

    分かりやすい施策でいうと、自身のパーパスを言語化する「パーパスカービング」を全社員に対して進めており、まずは経営層から率先して自身のパーパスの発信を行っています。

    そのパーパスと事業戦略を結びつけるために、新しい評価制度のプロセスの中で「組織としての事業目標の実現のために自分はどのような貢献ができるのか」「目標の実現は自己の成長(キャリア)とどう繋がるのか」という要素を入れるように、整備を進めているところです。社員がそれぞれの目標を単純に設定して、期ごとに評価するのではなく、組織の中での貢献や、将来のキャリアの実現といった要素を、上司と自然と会話できるように、制度の検討を進めています。

    評価者となる幹部社員についても、キャリアオーナーシップ研修の実施や、1on1の実施など、キャリアオーナーシップの促進に繋がるように施策を進めています。

    これまで実施した「見える化」の施策としては、エンゲージメントサーベイやパルスサーベイがあります。これは、会社全体としてキャリアオーナーシップの浸透状況をつかむための取り組みでもあります。今後は、自分自身のキャリアオーナーシップの状態を確認できるアセスメントを導入していこうと考えています。また、「マネジメントアンケート」という、部下から上司へのフィードバック施策を推進し、上司のキャリアオーナーシップ推進の姿勢の評価について、検討していく予定です。

    キャリアオーナーシップ人材を「増やす」施策については、ポスティング制度による社内の異動機会の拡大があります。

    これまでも社内公募の制度を通じて、年間100人から200人は異動していたのですが、企業の規模から考えると十分な人数ではありません。何千人規模でのポスティングを実現しようと、施策を進めています。もちろん、希望する全員がポスティングの枠に収まるわけではないですが、自分で自分の進路を決める機会として注力しています。

    「ジョブチャレ」という社内インターンの取り組みも推進しています。半年から1年ほどの期間、他の部署の仕事を経験できる制度です。

    経営戦略と人材戦略を「つなぐ施策」については、ジョブ型人事制度の導入や、新しい人事制度である「コネクト」などの新しい仕組みの導入が挙げられます。これらの制度を通じて、キャリアオーナーシップ人材が活躍できる環境を整えることが重要だと考え、力を入れています。

    求められる人材像やジョブディスクリプションは提示していますが、もう既にキャリアオーナーシップを持っている人材に何を求めているかが、背景も含めてまだ明確に提示されておらず、まずこれに取り組む必要があると考えています。

    また、e-ラーニングによって、多くの社員がキャリアオーナーシップという言葉は知っているという状態にはなりましたが、まだまだ行動を起こしている人は多くないのが実情です。春から、一般社員へのジョブ型人事制度の導入が始まるのですが、「制度は導入した」という状態ではなく社員がキャリアオーナーシップを持って社内の制度を活用している状態を目指していきたいと考えています。

    株式会社LIFULLの発表~組織の成長の鍵をにぎる社員の「内発的動機付け」~

    WEBビジネスが中心の現在のLIFULLは、固定資産ではなく「人」こそが最大の資産であり、人材力の向上が経営上不可欠であると考えています。LIFULLが掲げる「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージを実現するための取り組みを、トップダウンとボトムアップの両軸で成しえていきたいと考えています。

    キャリアオーナーシップを持っている人材の定義については、社内には定義をもともと設けていませんでした。ただ、コンソーシアムへの参画をきっかけに改めて考えてみたところ「内発的動機に基づいてやりたいことに取り組める人材」なのではという考えに至りました。

    個人の内発的動機に基づいてキャリアデザインしたことに挑戦してもらうということが、短期の成果においても、長期の成長においても、すごく重要で、個人の人生にとっても会社の業績にとってもプラスだと考えています。

    弊社では、ビジョンとカルチャーを明確に言語化することで、会社としての方向性を全社に示しつつ、マネジメント層を介して、メンバーに伝わるようなコミュニケーションに力を入れています。採用や評価についても、ビジョンフィットやカルチャーフィットをとても重視しています。

    「内発的動機付けを大事にする」というカルチャーに基づいた人事制度や各種施策の連動を、弊社では意識して取り組んでいます。

    キャリアオーナーシップ人材の「見える化」の施策としては、キャリアデザインシートの運用があります。全社員が、自身のキャリアについての希望を半年に一度入力してもらい、上司と共有して頂いています。上司からは、タレントマネジメントシステムで、部下の過去の経験やスキルが見られるように、仕組みを整えています。

    また、半年に一度のエンゲージメントサーベイ、毎月のパルスサーベイを行っています。サーベイの結果に基づいてPDCAを回すということは各部署でできています。
    現在は、サーベイを社内オリジナルのものに置き換えています。サーベイを手掛かりにどのようにキャリア自律を促していくかもまた、重要な課題と捉えています。

    キャリアオーナーシップ人材を「増やす施策」として、社内副業制度、新規事業提案制度、新規事業に挑戦したい人のための勉強会などに、積極的に取り組んでいます。

    一人一人への機会の提供は力を入れており、やりたいと思えばやれる場所はあるという状況を目指しています。ただ、そこに至るまでのキャリアデザインを描くことが、全員が全員できるかというと決してそうではないので、躓いたり悩んだりしている人に対して、いかにマネージャーや人事部門が支援できるかが重要だと考えています。

    また、新規事業の案件は増えているものの、実際に立ち上がった事業が拡大していくという実績までは十分には出ていない点についても、課題だと考えています。

    経営戦略と人材戦略を「つなぐ施策」としては「未来人材会議」があります。組織全体で横断的に人材育成を検討する取り組みです。個人の内発的動機を引き出し、キャリア実現を支援し、組織のイノベーションの創出につなげていくことが今後の重要な課題です。

    パーソルキャリア株式会社の発表~キャリア自律と成果指標のつながりをどう分析していくかが今後の課題~

    当社のミッションは「人々に「はたらく」を自分のものにする力を」というものです。これを見ても分かる通り、キャリアオーナーシップを持つ人材を社会全体で増やしていくというのが、事業の上でも目標となっています。ビジネスとしては社外でキャリアオーナーシップ人材を増やす必要がありますが、同時に社内でも増やして、両輪をまわしているのが特徴だと認識しています。

    私たちのビジネスは「人」が最も重要な競争力の源泉になりますので、社内の人材のポテンシャルを最大限に発揮させることが、ミッションの実現につながると考えています。年1回の全社総会や期ごとのキックオフの場で、社長や経営層から、キャリアオーナーシップあふれる世の中をつくっていこう、自分たちもキャリア自律していこうという発信を繰り返しています。

    また、事業責任者が、各事業部門がミッションにどう刺さっているかをしっかり言語化して、管理職からメンバーに伝えていくという流れを徹底しています。

    ミッションとして掲げるキャリアオーナーシップの推進は、経営の最重要指標としており、非財務指標としてキャリアオーナーシップの指標を独自に作り、定量的にどれだけ目標に近づいているのかを測るという取り組みも行っています。人事評価制度と一貫性を持って進めていけるように、評価制度も変えながら進めています。

    キャリアオーナーシップ人材の「見える化」については、エンゲージメントサーベイを一つの指標にしています。キャリア自律に関する設問も重要項目として含まれています。数値は終えていますが、キャリア自律と成果指標のつながりをどう分析していくかが今後の課題だと考えています。

    キャリアオーナーシップ人材を「増やす」施策については、上司とのキャリア面談、キャリア開発のための研修やワークショップ、キャリアコンサルタントへの相談、他人に目標を立ててもらうワークショップ「タニモク」、全ポジションの紹介を行っている図鑑の作成、ジョブポスティング、社内でのジョブトライアル、など様々な制度を設けて運用しています。

    上司とのキャリア面談があらゆる施策の起点になると考えています。本人の望むキャリアにどう上司が関わっていくように促していくのか、そして人事としてどうフォローアップしていくのかについて、これから更に考えていく必要性を感じています。今期は、キャリア面談とMBO(目標管理制度)を接続してチューニングしました。会社の価値創造のための「目標」と本人の「キャリアデザイン」のつながりを、対話を通じて可視化するように促しています。

    経営戦略と人材戦略を「つなぐ」施策として、全社横断で育成や異動配置の議論をする「人材戦略会議」を実施しています。

    現状、全社の異動配置については、事業戦略とうまくマッチングできていると考えています。しかし、個人のキャリア開発を起点にしたものになりきれていないのが実情で、そこをつなげていくのが今後の課題です。

    エンゲージメントサーベイのキャリアオーナーシップ関連のスコアは上昇傾向にあります。ここを継続してやりながら、年々増えていく施策のうち効果のあるものを取捨選択したり、上長の支援をどのように実施していくのかを確立したりしていくことが、今後の重点テーマだと考えています。

    構成:河原あずさ・西舘聖哉(Potage)
    グラフィックレコーディング:くぼみ

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