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キャリアオーナーシップとはたらく未来研究会(第1期)

第9回 参画企業の現在地 コクヨ、キリンホールディングス、KDDI、三井情報

2022.02.25

研究会

2021年12月21日、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」の第9回 研究会が開催。第9回 研究会では、各社に作成いただいた「キャリアオーナーシップ経営カルテ」を発表いただき、参画企業同士でのディスカッションを実施しました。
第9回では前半として、コクヨ株式会社、キリンホールディングス株式会社、KDDI株式会社、三井情報株式会社の4社のプレゼンテーションが行われました。
 
本記事では、各社の発表内容のグラフィックレコーディングによるまとめと、発表内容の一部をご紹介します。

※こちらのカルテを使用し、各社がキャリアオーナーシップ経営の全体像を整理・発表を行いました。各社の記載内容は研究会の議論を活発にするため非公開となっています。

INDEX

    コクヨ株式会社の発表~事業と人の成長に欠かせない多様な人材の活躍を実現するため、人材流動性を高め、ビジネスリーダーの育成を進める~

    社会の変化や事業環境の変化を見据えて、2030年長期ビジョンと2022年から始まる第3次中期経営計画を策定しました。
    企業理念を「be Unique.」に刷新し、自らの役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と再定義した上で、100年続いている既存事業を大事にしつつ、一方で新しい領域へ事業を拡大することで、多様な事業の集合体になることを目指しています。

    それを実現するために、人事戦略上のキーワードとして「事業と人材の同時成長」を置いています。

    人材成長だけを目的化して施策を打つのではなく、事業成長に資する人材成長を人事部門のテーマとして、取り組みを行っています。

    2015年以降いくつかの取り組みを開始しており、まだ道半ばですが、「自律的にキャリアを考え、自ら新しい領域にチャレンジしていく人材」や「社会課題を捉えて価値を高めていける人材」を見える化し、増やし、事業と繋げることができるように取り組んできています。

    現在は2030年までのロードマップを描いて施策に取り組んでいます。最初の3年間では、人材の流動性を高めるために会社が新しいチャレンジ領域を増やし、そこに人材を募り、挑戦してもらうことで、リーダーシップを発揮して新しい領域に取り組める人材を増やそうとしています。将来的には、社内外の人材が「コクヨこそがチャレンジできる環境だ」と惹きつけられる企業になることが理想です。

    コクヨでは社会との繋がりを大切にしていきたいと考えています。キャリアオーナーシップ人材を輩出することで社会に貢献し、チャレンジの場、成長できる場としてコクヨを選んでくれる人が増えることを目指していきたいと考えています。

    キリンホールディングス株式会社の発表~新しいものを0から生み出し大きくできる人材を増やしていく~

    キリングループにとって、酒類・飲料等の食領域、医領域の各事業はグループの基盤であり、今後も環境変化に対応して着実な成長を目指していくことに変わりありません。一方で、世界的なアルコールに関する規制の流れや昨今のコロナ禍の影響、健康課題等々、今後の経営を取り巻く大きな環境変化を想定し、事業ポートフォリオを大きく変革していく時期に来ています。具体的に注力していくのはヘルスサイエンス事業であり、これを将来の柱にしていくために、長期経営構想・中期経営計画に則って、人材ポートフォリオも変えていくという局面にいます。よって、経営理念や戦略等の会社の方向性と、個人のキャリア志向や成長の方向性が繋がっているのかは重要なアジェンダだと考えています。

    当社では、1990年代から人事の基本理念として「自律的なキャリア形成」「主体的なジョブデザイン」「社会人としての自律」を社員に求めるものとしています。これを発揮し続ける人材が「キャリアオーナーシップが高い人材」と定義できるのではないかと考えています。

    現在、注力している施策として、キャリアコミュニケーションの強化があります。「見える」アプローチのひとつであると言えます。全社員にキャリアコミュニケーションシートを記載してもらい、それぞれのwill/can/shouldを可視化できるようにして、リーダーと対話しています。個人のwillと現在の仕事・目標をできる限りすり合わせ、仕事を通じた成長をより加速し、will実現にも繋がることを狙っています。

    経理理念の浸透や各種活動が、従業員の意識・行動や組織風土にどのように繋がっているか、現状を把握・評価するために、2013年からエンゲージメントサーベイを年1回の頻度で継続実施しています。これも「見える」のひとつです。

    その他にも「わたしのキャリア」というインタビュー企画を社内ポータルサイト内で展開し、活躍している若手・中堅社員やリーダーが、これまでのキャリアを振り返って、仕事への向き合い方や経験を語り、仕事における成長のポイントについて広めています。

    また、事業別・機能別の人材ポートフォリオがどのような状態にあるか、組織能力の獲得・維持・強化に向けて短期的あるいは中長期的にどんな人材が必要か、育成状況はどうかの見える化を強化しています。

    「増やす」施策については、特に直近1-2年は、キャリア採用や社内公募の増加、副業や副業の受け入れなどに力を入れて取り組んでいます。また、選抜型の研修や手挙げ機会の増加も意図的に行っています。人材の獲得、発掘・選抜、成長のそれぞれの局面から、キャリアオーナーシップ人材を増やしていくことを目指しています。

    「つなぐ」施策の一例として、ビジネスチャレンジというブログラムがあります。新規事業を募集し、実際に提案が通った場合には、事業化に向けて取り組んでもらいます。まさに、会社・組織の成長と個人の成長の機会としています。

    これまでのキリンの長い歴史の中では、規模の大きい事業を継続していくため、業務品質と安定性維持のために、やるべきことを着実に実行する人材が評価されてきたと言えるのではないでしょうか。一方、これからの時代は、新しいものを0から生み出し大きくしていくことができる人材が必要です。今後も新たな取り組みを取り入れながら、キャリアオーナーシップの高い人材を増やすことにより、経営・事業の成果に繋げていきたいと考えています。

    KDDI株式会社の発表~各部門の事業ニーズと個々のキャリアプランの連動を目指していく~

    国内の通信市場が縮小してきて、新しい領域の開拓のために人材の多様性が求められているという背景が、人事戦略においてはまず存在します。

    事業環境の変化に対応するために、キャリアオーナーシップを推進し、社員の成長速度を上げていきたい。また、国内外から優秀な人材を呼び込みたいと考えています。

    キャリアオーナーシップ人材とは、自分のキャリアの現状を把握し、なりたい姿と現状との差分を理解した上で、自分のキャリアストーリーが描けている人材だと弊社では定義し、経営層からの積極的な発信を行っています。

    「見える」の施策では、エンゲージメントサーベイの実施、タレントマネジメントシステムでのキャリア公開、人材レビュー導入による人材の可視化を行っています。KPIに基づく事業成長への貢献の可視化や、タレントマネジメントシステムでのキャリア公開の実施率の向上が、今後に向けての課題だと認識しています。

    「増やす」施策としては、1on1を制度化して社内に浸透させています。また、社内業務の公募や、社内副業の実施なども進めています。

    自身のキャリアプランの公開がキャリア実現につながることを示すためにも、副業や公募の実績を増やしたうえでマッチングをかけていきたいと考えています。

    「つなぐ」施策では、事業ニーズと社員のキャリアプランの連動を目指してジョブ型人事制度の導入を進めています。現在は、人事サイドが事業と個人をマッチングして人材配置する形になっているのですが、人材ポートフォリオを可視化することで各事業の方向性を明確にし、組織全体がそれぞれの事業ニーズに応じて人材を社内から発掘できるような仕組みを整えていきたいと考えています。

    これらの施策ははじまったばかりで、まだまだこれからという認識ですが、1on1が浸透してきて、キャリアの棚卸や今後の計画を上長と相談しながら考えられる環境が整ってきているのが、今後の施策を進める上で重要な成果だととらえています。新しい取り組みへの理解や実践度も上昇してきているので、引き続き注力していきたいと考えています。

    三井情報株式会社による発表~社員一人ひとりが主体的に考え、行動する「場」や仕掛けをつくる~

    当社では、直近の2~3年の間に、デジタルトランスフォーメーションをお客様と一緒に創造する企業であり続けるために、多くの施策を急速に進めています。その過程で、当社のあり姿を実現するために必要な人材像や人材育成について考え続けてきました。

    お客様が欲しいものをただ作るのではなく、本当に必要なものを一緒に創っていける人材とはどのような人材か、会社はどの様な方向に向かっていくのか、これらのテーマを社員と対話することにより、自分達はどのように変化に対応していく必要があるのかを考える姿勢が根付き始めています。

    社員の成長を会社として支えていくために定義した人材基本方針の策定や、全社ワークショップを通じて創り上げた「MKI役職員の価値観」の共有を通じた風土醸成が土台になり、その土台の上に社員一人ひとりのキャリア自律への意識が、少しずつではありますが、生まれはじめています。会社としては、社員が主体的に考え、行動する場や仕組みを創り続けていきたいと思っています。

    現状では、キャリアオーナーシップ推進の「見える」「増やす」「つなぐ」が同時進行で進んでいるように見えています。それぞれの計画について、上手く関係性を作りながら、整理して整合性をとっていく流れになるでしょう。

    一方で、MKIキャリアフォーラムやMKI Career Lab(キャリアを主体的に考えるためのコミュニティ)などの施策を通じて、社員がきっかけをつかみ、行動変容を起こすムーブメントは起きているものの、キャリアオーナーシップについて経営のメッセージとしてはまだ出せていません。メッセージを出しながら、全社としての取り組みや仕組みとしていかに整えていくかが課題です。

    エンゲージメントサーベイは2年前から始めており、今期は本部別のフィードバックや意見交換、数値では見えないグッド・プラクティス(組織力を向上するための各部門独自のより良い取り組み事例)の全社共有を浸透させていく予定です。自身のキャリアプランを書き込んでいくような人材データベースを刷新したのも2年前です。徐々にデータがたまりはじめているものの、まだ十分ではないというのが実情です。

    定量的にはかることのできる成果を生み出すのはこれからですが、アクションは起こってきているので、これを続けていければと考えています。

    構成:河原あずさ・西舘聖哉(Potage)
    グラフィックレコーディング:くぼみ

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