「見える」グループによる発表 ~そもそも、キャリアオーナーシップ人材は企業にとって良いのか?また、どう見える化できるのか?~
キャリアオーナーシップ人材の可視化のためには、まず前提として、個人の動機や経験値・スキルと事業部門とをいかに透明感を持ってつないでいくかがポイントだと考えています。
そのためには、オープンに個々人が自身のスキルや動機、目指したいキャリアを「見える化」して、上司や関連部署などのコミュニケーション相手に、きちんとそれを伝えられるか、理解してもらえるかも大事になってきます。
個人がいかに自律性を高めて、それを「見える化」しても、日々の仕事の中でそれが上司や同僚、関連部署に伝わらなかったら意味がないですし、むしろ、周りががっかりするようなコミュニケーションをとってしまうこともありえます。
そしてコミュニケーションを取る側はもちろん、コミュニケーションを受け取るリーダーやマネージャー側にもキャリアオーナーシップの見える化に対する理解や、知識を持っておくことが大前提として必要だと考えています。日常的にキャリアオーナーシップの概念について触れる機会をつくり、社員全体に定義を理解してもらう必要性を感じています。
また、組織全体に「心理的安全性」がないと、社員が見える化した自身の内発的動機を、上司や周りに対してオープンに伝えられなくなってしまいます。当たり前に自分の価値観を発信できる環境づくりが大事になります。
会社都合の異動なども起こりうる中で、面談などを通じて、キャリアの納得感をいかに与えていくかも重要です。社員のエンゲージメントについても、定量的な可視化を行い、施策に対する効果検証をしていく必要があると考えています。
「増やす」グループによる発表~キャリアオーナーシップ人材を効果的に増やすには?~
キャリアオーナーシップ人材を増やすためには、大前提として、キャリアオーナーシップ人材の定義と可視化が必要だと考えています。
その上で、キャリアオーナーシップを持っている人材、これからキャリアオーナーシップを身につけてほしい人材を明確にし、それぞれ別のアプローチで育てていく必要性を感じています。定義が抽象的だと、誰に対して、どんな施策をして、どんな効果を見込んでいるかを社員に発信しても納得感が薄いですし、マネジメントサイドも動き方が分からなくなるのではと感じています。
そして、会社が求めるキャリアオーナーシップ人材の定義を踏まえて、ファーストステップとしてどの層に対して手を打っていくと効果がありそうなのかを考える必要があります。
キャリア研修などを実施すると分かるのですが「積極的に参加してくれる層」、義務的に参加する「サイレントな層」「行けと言っても来ない層」に大別されます。そのカテゴリを踏まえると、ファーストステップとしては「サイレントな層」に対して、まずは一歩踏み出すためのガイドを提供したり、明確なメッセージを出したりすることが効果的だと考えています。
「サイレントな層」に向けた施策において大事なのは、「心理的安全性」の担保です。私たちの検討グループの中の会社の事例では、どんなキャリアにチャレンジしていきたいかをまとめるシートを社員に作成してもらう際に、上司に全ての情報が公開されないようにしたり、社内副業制度を整備して、心理的安全性を担保しつつ、リスクをおさえた状態で違う職種にチャレンジできる仕組みを整えていたりします。こうすることでこちらの会社では、社内の50代の人が副業制度にも手を挙げてくれ、キャリアオーナーシップを発揮して働いてくれているそうです。
こういった施策は、社員のお手本になる「ロールモデル」をどれだけ作っていけるかというところが1つの生命線になります。個人のチャレンジ、そして会社としてのチャレンジを見える化し、しっかりとモニタリングをしながら、社内への影響を徐々に大きくしていくことが大事になると考えています。
「つなぐ」グループによる発表~キャリアオーナーシップ人材を持続的な企業の成長につなげるにはどうすべきか?~
私たちは、キャリアオーナーシップ人材の存在を事業成長につなげるために、1人1人の強み/弱みや、キャリアに対する意向などを、会社としての意思決定にどう接続していけばいいのか、そのアプローチについて議論しました。
大前提としての施策としては、個人の「カルテ」づくりが大事だと考えています。いわゆる職務経歴書や、レジュメや、自身の現在地点をまとめたものです。自己理解を深めるようなシートを作成し、全社的にきちんと可視化して、それを元に人材ポートフォリオを構築するというのが入口であり、絶対条件になりうると思います。
ただし、それを書いた後にどういうメリットがあるのかが社員に伝わらないと、カルテはきちんと整備されないとも考えています。書いても結局何にも繋がらないという状況だと、社員は白けてしまいますし、真面目にシートを埋めてくれません。ここは大きな課題だと考えています。
例えば、自分から手を挙げて異動したいときや、自分のやりたい仕事に名乗りを挙げる際には、この「カルテ」が必須であると周知する方法もあるでしょう。また、書いてもらった情報については、経営の意思決定の際に、マネジメント側がきちんと考慮しながら進めていくということを、経営レイヤーからアナウンスする必要性も感じています。
「カルテ」を書いた結果、きちんと異動につながったり、社内からヘッドハンティング的に声がかかったりするような、社員にとってのメリットにつながるような仕組みが整えられれば効果的だと考えています。
構成:河原あずさ・西舘聖哉(Potage)
グラフィックレコーディング:くぼみ