タナケン教授の
キャリアオーナーシップ経営論⑥

コンソーシアム第3期の3つのポイントキャリアオーナーシップ経営のこれから

2023.10.17

寄稿

キャリアオーナーシップコンソーシアム第3期の取り組みが始まっています。第3期には、日本を代表する38の企業と団体が参画し、毎月の全体会には、各組織を代表される方々が集結し、その数は160名にも及びます。リアル開催では「はたらく未来を創っていくという集合的なエネルギーに圧倒されるほどです。

さて、第3期は、以下の7つのテーマへの取り組みが進んでいます。この7つのテーマのそれぞれに関連する3つのポイントを、ここでまとめておくようにします。

1)キャリアオーナーシップは、自然発生しない、戦略的であれ。

まず、私たちが改めて理解しておくべきことは、キャリアオーナーシップは自然発生しないということです。とくに、コンソーシアムに参画している企業や団体は、それぞれ長年の組織の歴史があります。それぞれの組織を存続させてきた、経営、制度、評価、文化があります。その大部分はオーガニゼーション・オーナーシップ型でした。

組織が社員一人ひとりのキャリアのオーナーであったのです。それらの組織特性の再生産が続く中では、キャリアオーナーシップは生まれないのです。
それゆえに、私たちのキャリアオーナーシップの取り組みは、戦略的でなければなりません。
オーガニゼーション・オーナーシップ(*別言するならば、組織内キャリア型)の問題点を的確に把握し、その問題点をいかに打開していくかを明確に定めていくのです。ここで戦略的とは、期間を定め、最短の取り組みで最大のインパクトを生み出していくアプローチをイメージしています。

その方向性は明確です。つまり、オーガニゼーション・オーナーシップからキャリアオーナーシップへの転換を実現していくことなのです。その歴史的な挑戦が、この8つのワーキング・グループでの取り組みだといえます。

この点と関連して次に、

2)キャリアオーナーシップ経営を多角的・多層的に分析する。

私たちは、オーガニゼーション・オーナーシップからキャリアオーナーシップへの歴史的転換に取り組むだけではなく、いかにしてそれが実現していくのかをより体系的に示していく必要があります。

38の企業と団体が参画し、それぞれの社員数をあわせると約168万人という規模にはなりましたが、労働人口は6700万人。つまり、まだ2.5%の取り組みに過ぎません。

そこで、それぞれのワーキング・グループの取り組みを他の企業や団体にも参考になるような具体的なアプローチとして公開していくことが欠かせないのです。「はたらく未来白書」を2年連続で刊行しているのにも、そのような狙いがあります。

この局所的な取り組みから全体へのインパクトをつくっていくのです。キャリアオーナーシップが社会を動かす!という合言葉には、そのような思いが込められています。

そこで鍵を握るのが、「人的資本の情報開示」と連動する形で、キャリアオーナーシップの経営戦略を練り上げていくことです。「C/Oと事業貢献の見える化」部会では、まさにこの部分を明らかにすることになります。

キャリアオーナーシップの推進や浸透とは、たんにキャリア研修の実施によって実現できることを意味するのではないのです。

私たちの挑戦は、キャリア開発の総合格闘技だと言えるのかもしれません。また、それは持続的な取り組みでなければなりません。

その点からして、キャリアオーナーシップの推進と浸透には、経営陣によるキャリアオーナーシップの戦略的なコミットメントが必要となります。

キャリアオーナシップの実現に向けた「人への投資」は、どの程度のものであるのか、その数値や投資額についても、いずれこのコンソーシアムでの活動を通じて明らかにしていきます。

そして、「人への投資」の効果を多角的・多層的に検証していくことなしに、キャリアオーナーシップが持続していくことはないのです。

超少子高齢化・労働人口減少・労働人口高齢化・経済の慢性的停滞、これらの社会的状況に直面するこの国の組織が、キャリアオーナーシップ型からオーガニゼーション・オーナーシップ型へ、逆戻りすることは構造的には考えられません。

危機を煽り続けることは得策ではありませんが、目の前の現状の客観的把握は続けなければなりません。

キャリアオーナーシップはこの国の再活性化の処方箋なのです。社員一人ひとりの主体的な取り組みに任せるのも一つの判断ですが、今の状況でより大きなインパクトを生み出していくのはキャリアオーナーシップ経営の戦略的かつ持続的な取り組みなのです。

そして、具体的な取り組みとして期待できるのが

3)キャリアオーナーシップ・ストーリーを毎週、紡ぎ出す。

キャリアオーナーシップについて考えているのは、経営層と人事部・人材開発部のみ、では困るのです。一人ひとりの社員と一緒に考えていくのです。そのためのアプローチは、アジャイルで構いません。
オーガニゼーション・オーナーシップからキャリアオーナーシップへと、今、転換期を迎えています。その転換期に翻弄されることなく、まさに、みなさん一人ひとりがキャリアのオーナーとなり、これからのキャリアを主体的に形成していくことを、伝え続けていくのです。

情報過多社会です。社内メッセージも1回では、すべての社員に届かないものとして理解するようにしましょう。さらに、社員がキャリアオーナーシップへと一歩を踏み出していくためには、何度もキャリアオーナーシップ情報を発信し続けていくようにするのです。
キャリア研修、社内公募制度、社内兼業・副業、新たな人事評価制度の導入、など、それぞれの新たな取り組みを常日頃から情報発信していくようにするのです。私は週に1度は、テキストベースでもショート動画でもいいので、社員に発信していくことをお勧めしています。

キャリアオーナーシップ経営のこれからは次のような全体図で考えています。

キャリアオーナーシップ経営のこれから

目指すべきは、社員一人ひとりの人的資本の最大化と生産性の向上、そして組織としては、グローカルでの競争力の向上です。経営戦略と事業戦略、そして、C/O戦略を相互に連携していくようにするのです。

着実に実現していくためには、一方で、DX(=デジタルトランスフォーメーション)とCX(=キャリアトランスフォーメーション)を展開し、SDCs(=Sustainable Development Careers、持続的なキャリア開発)を進めていくようにします。そして、もう一方で、それらの継続的な取り組みの過程でそれぞれデーターを収集し、人的資本の情報開示にも対応していくようにするのです。

キャリアオーナーシップ経営がこの国の動力源になると確信しています。

第3期での取り組みは随時、公開していくので、ぜひ、その都度、キャッチアップしていください。

キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 戦略顧問
田中研之輔

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