大切に育てていきたい言葉があります。
それは「キャリアオーナーシップ」です。
1人ひとりが働きがいを感じながら、主体的にキャリア形成をしていく。
心理的幸福感、生産性、競争力、を高めていきながら、はたらく未来を創出していく―
そんな「キャリアオーナーシップ」と「はたらく未来」をつなぐコンソーシアムは、第2期をスタートさせました。
キャリアオーナーシップの実現にむけて、8社の同志の皆様と駆け抜けた第1期。
各企業の取り組みをまとめたインタビュー、「企業間での相互副業実証実験」、「はたらく未来白書2022」、「キャリアオーナーシップ経営診断シート(β版)」など、大きな成果に繋がりました。
個人的にもキャリアオーナーシップ経営論連載は、忘れられない対談シリーズとなりました。ライフシフトの著者であるリンダ・グラットン教授、人材版伊藤レポートで知られる伊藤邦雄教授、そして、世界標準の経営理論を上梓された入山章栄教授とのダイアローグから、キャリアオーナーシップがはたらく未来を創っていくことが確信に変わりました。
ぶれることはありません。
やりぬくのみです。
第2期は、第1期の8社に加えて、12社以上が参画し、20数社でスタートします。2022年7月19日火曜に開催した、第2期のキックオフは、オンラインとオフラインを繋ぐ、ハイブリッド開催で、すでに企業間の課題を積極的に共有していく、イノベーティブな化学反応がみられました。
ここに「はたらく未来」がある、と感じました。
第2期で特に重点をおいて取り組んでいきたいことは、人事やHR領域の課題感を含めて、次の2点です。
1)キャリアオーナーシップ経営診断の検証と正式版ローンチ
キャリアオーナーシップを推進していく上では、企業の現状把握がかかせません。そして、共通言語(=指標や数値)を持つことではじめて、「現在地」の確認ができるのです。
各企業での取り組みや現在地をキャリアオーナーシップ経営診断やスコアとして、チェックできるシートを作成していきます。
参画企業とのプレ検証を重ねて、診断項目の精緻化を行います。キャリアオーナーシップ経営診断は、社内外で重要な指標になっていくものと考えています。キャリアオーナーシップ経営診断の結果をもとに、経営層と人事部で、キャリアオーナーシップ施策を戦略的に構築していく。その際には、適宜、他社との相対比較の中で、着手すべきポイントのスコープがより明確になります。
こうした取り組みは、HR領域のデータ化と解析を進展させていきます。これまで主観的な判断や労働集約的でアナログな対応が主流となっている中で、キャリアオーナーシップ診断結果は、客観的な判断とテクノロジードリブンな解析を可能にしていきます。
いずれはAIなどを用いて、参画企業以外の企業にも利用していただけるようなものへと深化させていければと考えています。
2)組織内キャリア経営からキャリアオーナーシップ経営へのロードマップの策定
キャリアオーナーシップ経営とは、これまでの組織内キャリア経営からの転換を意味します。組織内キャリア経営は、終身雇用、年功序列、企業別組合をベースにした「日本型雇用」の中枢戦略でした。社員のキャリアは、組織が決める。人事異動は会社の意向、社内公募制や社内外での副業・兼業も禁止とする、統制型の経営でした。
しかし、蓋をあけてみると、若手社員はこれからのキャリア形成に悩み、ミドル社員は組織に依存するようになり、シニア社員はモチベーションの低いまま組織にしがみついてきたのです。このような状態で、日本企業の生産性や競争力が向上するわけはありません。
キャリアオーナーシップ経営とは、単に社員のキャリア自律を促すのではなく、組織の再活性化に向けて、「最後の切り札」なのです。こうした変化に適合できない企業ではすでに、優秀な人材の流出と求める人材の獲得難に直面しています。なぜなら、社員のキャリアオーナーシップを応援しない企業は、「社員から選ばれない」からです。
人材版伊藤レポートにも書かれているように、これからの会社と社員の関係性は、「選び・選ばれる関係」でなくてはなりません。情報や行動を統制する経営は、フィットしないのです。
その上、それでは、「何からはじめたらいいの?」という経営者や人事統括者の切実な悩みにダイレクトに返答できるロードマップをまとめていきたいと思います。ロードマップを作成していく上での素案として、私が今、考えている見取り図を示しておきます。
これからの経営では、経営戦略、事業戦略、キャリア戦略が欠かせません。自律型キャリアへの社内施策として、何から着手していくことが、効果が見込め、経営戦略上の「最適解」なのかを見定めていきます。
現状、キャリアオーナーシップ施策に取り組まれている企業は、経営者のメッセージ発信、キャリア講演、E-ラーンングによる社員のリスキリング・アップスキリング、1 on 1 、キャリア戦略会議(1 on N)、社内公募制、社内副業・兼業、社外副業、これらに加えて、新人事制度や人事評価の改定に着手させています。
社員数や事業歴、事業特性を踏まえて、たとえば、3カ年でのキャリアオーナーシップ経営のロードマップを策定するなら、いかなる手順になるのかを検証を重ね、作り上げてきます。
このロードマップは、現在、社内で検証されている各種のデータとも、検証していきます。組織内エンゲージメント調査、心理的幸福感尺度などとキャリアオーナーシップがいかなる関係性にあるのかを導き出していきます。
20社を超える参画企業は、これらを実現できる集まりです。定期的に、キャリアオーナーシップ経営に関する知見や現状をお伝えする公開セッションの場も設けていきます。
その際には、ぜひ、参加いただき、皆様のお力を貸してください。
キャリアオーナーシップが、社会を動かす。
このメッセージを第2期は、次のように運用させてください。
キャリアオーナーシップ経営で、社会を動かしていく。と
キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム
顧問・田中研之輔