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【コンソーシアム顧問インタビュー】 企業は今こそ、社員のキャリアオーナーシップに向き合おう (田中 研之輔 教授)

2021.05.17

インタビュー

2021年4月20日、「個人の主体的なキャリア形成が、企業の持続的な成長につながる」という考えの下、業種や業界を越えて「はたらく個人と企業の新しい関係」を模索する企業8社が集まり、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」が発足しました。
今後、本コンソーシアムで、社員のキャリアオーナーシップを育む人材戦略を経営戦略の中に位置付け、キャリアオーナーシップ人材を育てようとする企業を増やし、個人と企業が互いの成長に貢献し合う関係性へ変えていくために、研究会や制度の実践・実証といった活動が始まります。
 
本格的な活動開始に先立ち、コンソーシアムの顧問・ファシリテーターに就任した法政大学キャリアデザイン学部・大学院 田中 研之輔 教授に、「なぜ今、このコンソーシアムが必要なのか」と「コンソーシアムが目指すはたらく未来」についてお話を伺いました。

田中 研之輔 教授 プロフィール

法政大学キャリアデザイン学部・大学院教授/一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
一橋大学大学院博士課程修了後、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員、日本学術振興会特別研究員(SPD:東京大学)などを務める。専門はキャリア論。企業顧問24社歴任。著書25冊。『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP)など。

INDEX

    人材戦略を経営戦略に

    今、「人材戦略を経営戦略に」ということが盛んに言われていますが、これはどういう意味なのでしょうか?

    これまで重視されてきた人材戦略は、人材を一括採用し、社内研修を段階的に実施し、組織内人材を管理・配置・調整・維持するメンバーシップマネジメントでした。これまでの人材戦略は組織内人材のマネジメントであり、コントロールを主としていました。

    しかし、ニューノーマルという言葉を持ち出すまでもなく、私たちの働き方の前提が大きな転換を迎えました。ハイブリッドワークやテレワークなどが当たり前となり、私たちの働く場所や働き方そのものが多様化しました。オフィスという物理的空間に集合することで維持されてきた組織内キャリアは、今、大きな曲がり角を迎えているのです。同僚や上司の働く姿がみえなくても、私たちははたらくを維持しています。

    こうした目の前の変化に柔軟に対応し、ビジネススキルをアップデートし、個々の生産性を向上させ、組織としての競争力を高めていかなければなりません。

    そうした中で、これからの人材戦略に求められるのは社員自らが主体的にキャリア形成していくことを支えるタレントマネジメント(=人材のポテンシャル調整)です。より私の概念で的確に表現するならば、タレントデベロップメント(=人材のポテンシャル最大化)が不可欠なのです。

    組織の視点から述べるなら、これからの人材戦略で大切なのでは組織内キャリア開発支援ではなく、自律型キャリア開発支援になります。社員を組織的に統制するのではなく、社員の主体的なキャリア形成に任せ委ねることが欠かせないのです。歴史的転換に適合するためには、抜本的な取り組みが不可欠なのです。

    だからこそ今、経営戦略の中枢に人材戦略を据えて、これまでの人材管理を見つめ直し、新人材戦略を構築していかなければならないのです。

    これからのキャリアオーナーシプが求められる時代に企業が直面する「個人と企業の新しい関係性」とは

    これからのキャリアオーナーシプが求められる時代に企業が直面する「個人と企業の新しい関係性」とはどういったものなのでしょうか?

    前提として、これまでの個人と企業の関係性は、日本型雇用に守られた安定的なものでした。年功序列、終身雇用、企業別組合という「3種の神器」に支えられることで、個人は組織にコミットしてきたのです。あらゆる統計的データからもみて取れるように組織へのコミットが組織内依存を生み出し、個人の生産性向上には直接結びついてない実態もあるのです。また、そもそも働くことが組織の寿命よりも長くなったと言われる今、組織に従属する個人ではなく、組織をリードしていく個人を人材開発していかなければならないのです。

    これからの個人と組織の関係性とは、一つ一つの課題に対してダイナミックに取り組むプロティアン(変幻自在)な関係性です。それはおそらく制度上のジョブ型雇用よりも、より柔軟なパフォーマティブな関係性です。

    個人は組織に対して何ができるのか。個人自らが組織へのエンゲージメントを高めていくような働き方が求められます。組織は個人を管理するのではなく、個人のポテンシャルを最大限に発揮するための人事施策を新人材戦略に据え、急ピッチに取り組んでいかなければなりません。

    つまりは、人材を適材に配置していくというプレースメント/リプレースメントを意味するのではなく、中長期でグロースをみすえ抜本的に戦略策定に着手すべきなのです。

    コンソーシアムで探求、実現したいこと

    コンソーシアムで探求、実現したいことを教えてください。

    コンソーシアムに参画するのは、経営戦略と人材戦略を橋渡しが可能なキープレイヤーの皆様です。

    現段階で私が考える新人材戦略とは、個人と組織の関係性よりよくし、両者が持続的に成長し続けるためのチャレンジングな取り組みになります。人材開発部による組織内キャリア形成を促進するための戦略人事ではなく、キャリアオーナーシップを促進させていく自律型キャリア形成を促す経営戦略なのです。

    私はコンソーシアムの取り組みを通じて、現状の課題を分析し、キャリアオーナーシップを促進させ、はたらく未来を構想していきます。コンソーシアムの具体的なゴールとしては、経営戦略と人材戦略を橋渡しする新人材戦略を具体化させます。

    新人材戦略は、これからの個人と組織の関係性を考える上でのキーフレームです。コンソーシアムでの取り組みや課題は、適宜、発信していきます。また、公開セッションも予定しています。現場の課題や問題を持ち寄り、参加していただければと思います。

    キャリアオーナーシップで社会を動かし、より良きはたらく未来を共に構想していきましょう。

    コンソーシアムの活動に関心のある
    企業、個人、メディア関係の皆様へ

    事務局からコンソーシアム活動についてご説明させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

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